[感想]ホームグラウンド/はらだみずき

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ホームグラウンド
はらだ みずき 著/本の雑誌社
お薦め度:★★★★☆

大切にしまっておいた夢はあるか── サッカーをする場所を探し求める親子。校庭の扉は閉め切られ、公園からも追い立てられたふたりが、偶然たどり着いたのは、緑の芝生がどこまでも続く広場だった。芝生の向こうには、手をふる老人が立っている。いったいだれが、なんのために、この場所をつくったのか?『サッカーボーイズ』の著者が描く、ひとつのグラウンドと三代に渡る家族の物語。


ちょっと話が出来すぎだけれども、それもまたいい

ひとことで言うならば、サッカー版「フィールド・オブ・ドリームス」です。

本のあらすじを読むと、サッカーをする場所を探す親子が主人公の作品のように感じられますが、主人公は芝生の向こうにいた老人の孫。けれども、本当の主人公は黙々と芝生の大地を築きあげていく老人その人だろうと思います。

歳をとるにつれ、澱のようにしてたまっていく様々な記憶。後悔しても取り返しのつかないこともあるでしょう。諦めてしまったこともあるでしょう。

けれども、一番始末が悪いのは、後悔していることや諦めていたこと、そのこと自体に自分自身でも気づかずに、ただひたすらに時が流れ去ってしまった時。

くも膜下出血で一命を取りとめた老人は、残り少ないであろう人生を見つめ、そうしてそこからなお、夢と希望、そうして幾ばくかの償いを見いだして行きます。

老人のたどり着いた答えは青々とした芝生の生えるサッカー場。

登場人物に悪人は誰ひとりとしておらず、物事は思い描いた方向へとするすると進んで行きます。あまりに上手く行きすぎて、ちょっと物足りないと、特に若い人はそう思うかもしれません。

けれども、ある程度年齢を重ね、「人生はいつからだってやり直しがきく」という言葉、あまりにもありふれたこの言葉に素直にうなづけない時が増えて来ている方ならば、この物語のゆるゆるとした雰囲気にきっと心を泳がすことができると思います。

ご都合主義の甘ちゃん小説が大好きな私としては、この作品に★5つをつけたいところでしたが、人物描写にやや深みがない点を考慮して★4つにしました。

「圭介、おれは今になって思うんだが、人がみんな同じほうばかりを向いて生きとったら、どうだ? そんな世の中はつまらんぞ。おまえは、おまえの生き方をすればいい。無理して、人と同じほうを向くことはねえ。そうじゃねえか?」