[感想]週末は家族/桂望実

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週末は家族
桂 望実 著/朝日新聞出版
お薦め度:★★★☆☆

シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の大輔と、その連れ合いで他人に愛を感じることができない無性愛者の瑞穂は、母親の育児放棄によって児童養護施設で暮らす演劇少女ひなたの週末里親になって、特殊な人材派遣業に起用することになるが―ワケあり3人が紡ぐ新しい“家族”の物語。(「BOOK」データベースより)


あらすじからは想像もつかないドライな展開の物語

「母親の育児放棄によって児童養護施設で暮らす演劇少女ひなた」とくればもう、苦労して生きているけなげな少女……といったあたりを想像してしまいがちですが、これがもう全くの見当違い。

そもそもが「思い込み」のままに生きていることの愚かしさをテーマにした作品なので、主役のひなたからして、読者の「思い込み」とは一線を画した少女として描かれています。

大人たちの心の機微を敏感に感じ取り、時には大人が喜びそうな受け答えをしてみせたり、人生を達観したり、母子が一緒に住むことが幸せとは限らないと主張してみたり、と年齢のわりには大人びた少女ひなた。

この少女の成長物語が描かれるのかと思ったら、これまた違って。

どちらかといえば、ひなたとの関わり合いの中で、週末里親となった「大輔君」と「オバサン」が今までよりも少しだけ大人になっていく話……といったほうが近いかもしれません。

物語はするすると展開して、あれよあれよと言う間に、ラストまでたどりつきます。

「思い込み」の愚かしさを扱った本書は、けれども、あまりに綺麗に物語がまとまりすぎてしまったためか、やや説得力にかけます。

そうか、そうだよね、と読者を納得させるだけのパワーが、あとほんのちょっと足りない感じなのです。

お涙ちょうだいのジメジメした物語は大の苦手で、ご都合主義のハッピーエンド作品が大好きな私ですが、そんな私でも、

こんなに世の中上手くはいかないよね。

とついつい思ってしまったほどです。

心の純な人が読んだならば、あるいはもっと感動できたかもしれませんが、この歳になると、まあ、いろいろと、ね。

それから、「いいだろ、大学生」と言った。「だらだらしてんだろ。緊張感がまったくないって、いいよな。ほんの数年後には、社会に放り出されて、毎日緊張しまくりの毎日になる。だが、そんなこと、わかってないんだよ。だから、あんなにのんびりした顔をしていられる。空に天国があるかどうか、知らないが、地上には間違いなく、あるね。大学生の四年間だ」