[感想]陰摩羅鬼の瑕/京極夏彦

4062754991

文庫版 陰摩羅鬼の瑕
京極 夏彦 著/講談社文庫
お薦め度:★★★☆☆

「おお!そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼一郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ―。嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。その主「伯爵」こと、由良昂允とはいかなる人物か?一方、京極堂も、呪われた由良家のことを、元刑事・伊庭から耳にする。シリーズ第八弾。(文庫裏表紙より)


推理小説として読むと物足りないのだけれども、それでも京極堂シリーズはやはり魅力的

陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)です。

フリガナなくしては、絶対に読めないであろうと難解なタイトルの本作なのですが、その内容は案外とシンプルです。

私などは(そして、おそらくは多くの読者がそうであると思うのですが)物語序盤で犯人がわかり、中盤をすぎたあたりからは、その事件の真相がうっすらと見え始めて来ました。

こちらとしては驚愕の真相のようなものをやはり期待してしまいますから、こんなにも早くから事件が見えてしまっていいのかしらん、とやや物足りなさを感じてしまったのは事実です。

それでも、これだけの長編を読み切ることができたのは、何と言っても京極ワールドならではの不思議な世界観。

榎木津、関口といったいつもの面々と、憑きもの落とし京極堂の絶妙なキャラクター設定。

シリーズ1作目から読み続けていると、推理云々よりはもう、ただひたすら京極堂の憑きもの落としのシーン見たさにページを繰っているふしもあったりします。

 

悲劇的要素の濃い本作は、読んでいて涙したとの感想をあちらこちらで見かけるのですが、私自身は涙することはありませんでした。

かなり涙もろいたちで、ドラマでも読書でも、周囲がびっくりするくらい普通のシーンで泣いてしまったりもするのですが、この作品には関しては全く……。う~ん、なんでだったのでしょう。

作中で語られる死生観に意識をひっぱられ過ぎていたせいかもしれません。

 

「どの過去を選ぶかで、今が変わる。今を一番良くする過去を―――きっと京極堂は選ぶんです」 908P