[感想]ゴールデンラッキービートルの伝説/水沢秋生

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ゴールデンラッキービートルの伝説
水沢 秋生 著/新潮社
お薦め度:★★★☆☆

フツーの小学六年生だった俺。“未来に夢を抱く”ことなんて諦めていた。あいつらと出会うまでは―ジュンペイとヨータの秘密基地には、「ゴールデンラッキービートル」と名付けた廃車のワーゲンがある。ある日ヨータは、ジュンペイがウサギ殺しの犯人と疑うクラスメートの女子・ヒナが、そのビートルから何かを持ち出すのを目撃する。河原に向かったヒナが手にしていたのは、挙銃だった…。少年少女の一瞬の友情を描く、希望にみちた青春小説。第7回新潮エンターテインメント大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)


大人になって振り返る子供時代

ウサギ小屋のウサギを殺したのは誰なのか?

その謎が細い(決して太くはない)一本の芯となって、小学6年生当時の姿と、今や30代となったクラスメートたちの姿として交互に描かれて行きます。

6年3組の担任だった要先生が

人間の記憶など、いい加減なものだということはよく知っている。

ときに人は記憶を削り、付け足し、書き換える。単純に良い部分を残し、悪い部分を取り除くというわけではない。今現在の都合のために、素晴らしい思い出に分厚い幕を掛け、悲惨な”事実”を捏造することすら珍しくない。

と語るように、ひょっとしたら過去の記憶は意識しないうちに自分の中で作りかえられた記憶なのかもしれません。けれど、だからこそ、時折そっと取り出してながめる想い出は、この上もなく妖しくて、甘美なのもまた事実です。

ジュンペイ、ヨータ、ヒナの3人で過ごした日々。それは「ゴールデンラッキービートル」の言葉に象徴されるように、キラキラと輝く一瞬だったことでしょう。

その輝きが純粋であればあるほど、どこか切なさを感じてしまうのは、この作品が子供向けの単なる青春物語ではなく、大人のための青春想い出物語になっているからなのだと思います。

ストーリーがなんとなくありがちだったことと、3人の後日譚にもう少し余韻が欲しかったことを考えて、★3つにしましたが、そこここに胸をうつ言葉があり、心にしみる作品であったことは間違いありません。

 

仕事で知り合って一時期は毎晩のように飲み歩いた友達。大学時代のほとんどの時間を一緒に過ごしたサークルの友達。高校時代に同じ部活だった友達。みんな一緒に過ごしたその時期は、相手のことが本当に好きで、大切で、一生の付き合いになると思ってた。でももちろんそんなはずはない。あのときの気持ちは、今はどこに消えたんだろう。毎日の忙しさに磨り減ってしまったのだろうか。時間の流れに押しやられてしまったんだろうか。それとも最初から、ただの錯覚だったんだろうか。