[感想]玻璃の天/北村薫

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玻璃の天
北村 薫 著/文春文庫
お薦め度:★★★☆☆

昭和初期の帝都を舞台に、令嬢と女性運転手が不思議に挑むベッキーさんシリーズ第二弾。犬猿の仲の両家手打ちの場で起きた絵画消失の謎を解く「幻の橋」、手紙の暗号を手がかりに、失踪した友人を探す「想夫恋」、ステンドグラスの天窓から墜落した思想家の死の真相を探る「玻璃の天」の三篇を収録。(文庫裏表紙より)


忍び寄る戦争の気配ゆえに、作品を心から楽しむことができなかったのが残念。

何気ない日常の中に謎を見いだす北村薫さんの作品が好きで、ベッキーさんシリーズ第1弾となる「街の灯 (文春文庫)」を読み終えてすぐ、第2弾も読もうと心に決め、手にとった作品です。

ですが、この作品は私が期待していたものとはいささか違っていました。いつもの優しさあふれる北村ワールドというよりは、第二次世界大戦前の不穏な空気が色濃く描かれいて、読んでいて何やら息苦しさのようなものすら感じました。

思ったことを自由に発言できない社会、一部の思想家の言論にあおられ国民の意識があらぬ方向へと統一されていくことの空恐ろしさ。謎解きに主眼を置くタイプの作品ではないからこそ、そして主人公の英子が純真であるからこそ余計に、これらの時代背景が重苦しくのしかかって来ます。

人それぞれ感じ方は様々でしょうが、私自身は作品を読み終えた後に味わう爽快感こそが、本を読むことの醍醐味だと思っているので、今作の「玻璃の天」はあまり好きになれませんでした。

シリーズ最終となる「鷺と雪 」では、戦争の足音がいよいよすぐそこにまで迫って来るのでしょう。直木賞受賞作となった作品ではありますが、おそらく読むことはないと思います。