[感想]蓬莱(ほうらい)/今野敏

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蓬莱
今野 敏 著/講談社文庫
お薦め度:★★★☆☆

そのゲームには「日本」が封印されている!?人気沸騰のゲームソフト「蓬莱」を開発したソフトハウスは、パソコン版に続きスーパーファミコン版を計画した。しかし、恫喝し、力尽くでその発売を執拗に妨害する巨大な力が…。バーチャル・ゲームと伝奇世界がリアルに交錯する傑作エンタテインメント巨編。(文庫裏表紙より)


題材はとても興味深いのに、全体的に緊迫感に欠けてしまったのが残念

スーパーファミコン版ソフト「蓬莱」の発売を中止するよう恫喝をうけるソフト会社社長。誰が、そして一体何のために? その2点を中心として物語は進行していきます。

大きな鍵を握るのは、当然のことながらソフトの「蓬莱」なのですが、いくら読み進めて行っても、このソフトの魅力が残念ながらさっぱり伝わってきませんでした。

ソフトの世界観やその世界観の元となった歴史的事項にはついては、かなりこと細かく説明がなされています。作者の今野さんは相当数の資料にあたったのだろうな、とその努力に感心はするものの、それが作品に上手く反映されていない印象なのです。

史実を描こうとするあまりに、他の部分がやや手薄になってしまった印象です。

殺人を犯してまでもソフトの販売を止めようとするその動機にも説得力がなく、むしろ人を殺す必要などまったくなかったのではないかと、ミステリの根幹部分に疑問さえ感じてしまったほどです。

また、登場人物たちにも危機感のようなものが全く感じられず、飄々と物語が進んで行ってしまった印象です。

とはいえ、そこは今野さんの作品ですから、決してつまらないわけではなく、先へ先へとページをめくらせる手腕はさすがのものがありました。

けれども、それだけに、もっと別の角度から人物たちや事件が描かれていたなら、もっともっと素敵な作品に仕上がっていたのではないかと思うと、残念な気がしてなりません。