[感想]ルー・ガルー2/京極夏彦

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ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔
京極 夏彦 著/講談社
お薦め度:★★★★☆

近未来。少女・牧野葉月たちは閉じた世界の中、携帯端末(モニタ)という鎖に縛られて生きていた。そこは窮屈ではあるものの不純物のない安全な檻――のはずだった。が、その世界に突如現れた連続殺人犯。少女たちは、殺人犯とその背後に聳える巨大組織との対決を余儀なくされる。
驚愕の事件から数ヵ月。世間は一時、安定を取り戻したように見えた。
前回の事件の被害者として、この世界に漠然とした不安を抱えていた少女・来生律子のもとに、小瓶に入った謎の毒を持った作倉雛子が訪ねてくる。雛子は毒を律子に託し姿を消す。奇妙な毒の到来は、新たなる事件の前触れなのか……。
「突如凶暴化する児童たち」「未登録住民達の暴動」「奇怪な製薬会社」「繋がる過去と、現在の事件」すべての謎が明かされるとき、新たなる扉を開けた少女たちは何を想う!? (Amazon.co.jpより)


964ページの分厚さも気にならない面白さ!

前作「ルー・ガルー」(感想はここ)から10年後に刊行された続編ということで、少女たちもすっかり大人になった10年後の世界が描かれるのかな……、などと思っていたら、まったくもって大違いでした。

まるで何事もなかったかのように、前作の続きから「ルー・ガルー2」は始まるのです。

想像していなかった展開だったので、始めはちょっと面くらいました。でも、そのおかげで前作の物語前半部分のような、近未来の世界観を説明するがためのまどろっこしさもなく、あっという間に物語がスタートしました。

そう、読み始めてすぐにもう虜です。

雛子が律子に託した「毒」、橡(くぬぎ)の友人の事件にまつわる謎、誰ともわからぬ組織による少女たちの監視、未登録住民の失踪……、バラバラだったひとつひとつの物事が、やがてひとつになった時に浮かび上がって来る悪事の目的とその黒幕。

今回も天才少女美緒のぶっ飛びぶりが、物語に躍動感与えています。まるで黄門様の印籠のようにして、ラストに展開されるお約束のシーンに至っては、もう爽快としか言いようがありません。

「やる前にぐずぐず考えたってイイことはひとつもないって。百パーセント確実な未来予測なんか絶対にできないんだから。不確定要素は確定要素よりずっと多いぜ。だから、どんな状況になったって華麗に対処できる軽(かろ)やかさの方を大事にしろよ」

こんなセリフをさらりと言えてしまう美緒は、本当に格好いいとしか言いようがありません。

 

今作は、世界観うんぬんよりも、ストーリー展開のスピード感を大事にしているようなところががあり、ひとりひとりの少女たちの描きわけがやや薄くなっています。

前作から読んでいる読者にとっては、そういったことは何ら気にならず、うんうん彼女ならそうやるよね、などと納得できたりもするのですが、そうでない人には、多少理解しがたい部分もあるやもしれません。

そういうわけで、この作品だけ読んでも内容は理解できますが、出来ることなら前作が未読の方はそちらから読むことをお薦めします。

えっ、こんなに長い作品を2作も続けて読むのは面倒臭い?

いえいえ、大丈夫。読み始めたら止まりませんから。