[感想]平成猿蟹合戦図/吉田修一

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平成猿蟹合戦図
吉田 修一 著/朝日新聞出版
お薦め度:★★★☆☆

新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡な暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、すべての始まりだった。長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、秋田県大館に一人住む老婆…心優しき八人の主人公が、少しの勇気と信じる力で、この国の未来を変える“戦い”に挑んでゆく。希望の見えない現在に一条の光をあてる傑作長編小説。(「BOOKデータベース」より)


物語の核となる部分がころころ変わりすぎて、結果薄味に

初の吉田修一さん作品です。

読んでいる途中はとても面白く、いやもっと言うならば、最後の最後までとても面白く、ものすごい集中力で本書を読み進め。

そうして最後のページを読み終わり、パタンと本を閉じた瞬間に、猛烈に物足りなさを感じてしまいました。

「平成猿蟹合戦図」というタイトルの本書ですが、結局このサルとカニは何を指し示していたものなのでしょうか。主人公たち側とあちら側(あいまいな表現ですいません)だろうな、とは思うのですが、それにしては対立の構図が希薄です。

ひき逃げ事件を発端にして、本来なら出会うことのなかったかもしれない人々が、あちらこちらで緩く繋がりあい、協力しあいながら最後の「戦い」に突入する。

それはわかるのですが、物語がコロコロと転がりすぎてしまって、結局何が言いたかったのかがさっぱりとわからなくなってしまった感があります。

キーとなると思ったひき逃げ事件は、結局は発端でしかなく、残り1/3あたりで唐突に出て来た「戦い」が何やらたいそうな勢いで描かれ、そうして迎えるラスト。あれよあれよの大団円。

う~ん、薄味。

他の方の感想で同じく吉田さんの作品「横道世之介」と比較されて、こちらのほうが面白かったといっている方が多かったので、機会があったら、というか文庫が出たら、ぜひ「横道」を読んでみたいと思います。