[感想]江ノ島西浦写真館/三上延

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「ビブリア古書堂の事件手帖」の作者・三上延さんによる作品で、殺人事件の起きないいわゆる日常のミステリーを扱った連作短編集。

日常のミステリーということで、雰囲気はビブリア古書堂にとても近いが、今度の舞台は主の亡くなった古びた写真館。

デジタルカメラ全盛の今にあって、写真館という言葉を聞いただけで、すでに心の中にふんわりとノスタルジックな気分が漂って来る。

作者の三上さんも上手い舞台を選んだものだとつくづく思う。

「江ノ島西浦写真館」のあらすじ

亡き祖母の遺品整理をするために、江ノ島にある古びた写真館にやって来た主人公の桂木繭。

過去の苦い経験から写真を撮ることを封印して来た繭は、写真館に足を踏み入れることに強い抵抗を感じていた。それでも遺品整理をしなくてはならない繭は、なんとか自身を奮い立たせながら写真館に足を踏み入れる。

そこにあったのは、注文を受けたまま客に私そこねていた「未渡し写真」。

写真を受け取りに来た青年・真鳥秋孝とともに写真にまつわる謎を解き明かしながら、注文主に写真を返して行く繭は、やがて自分が避けて通って来た過去とも対峙することとなる。

感想

次々と明らかになって行く日常の謎は、本当にささやかなものが多い。ビブリア古書堂のように圧倒的な知識量に裏打ちされたものではないから、

ほぉ、なるほど。

といったような衝撃もない。

それでも、次から次へとページをめくって読んでしまったのは、物語全体に漂う懐かしさと切なさの絶妙なバランスゆえかもしれない。

セピア色で描かれた表紙絵がこれまたいい仕事をしていて、まだ一文字も読んでいない段階から、

これはきっと優しさと切なさが入り交じったとても素敵な物語に違いない。

と、勝手に期待が膨らんでいく。物語を読み始めてすぐに、写真館のイメージが頭の中でふわっと広がったのは、作者の筆力によるところも大きいとは思うけれど、表紙絵の効果もかなり影響していたのではないかと思う。

決して派手な物語ではないので、好き嫌いがわかれるところかもしれないが、私自身はこういう話は嫌いではない。

というか、もっともっと読んでいたいので、

ビブリア古書堂に続くシリーズものになるのかな?

と期待しながら読んでいたのだが「未渡し写真」はすべて収まるべきところへとおさまってしまうので、ここから先を続けるのは……。

うぅん、でも。

あのエピローグのその先が知りたくて仕方がない。

となると。

これはもう繭が写真館を引き継いで、写真館の主として活躍するしかないと思うのだけれども、どうなんだろう??