【感想】影憑き /輪渡颯介

122010

輪渡竣介さんの古道具屋 皆塵堂シリーズの第6作目。

私自身は1~3作目までは読んでいるのだが、4作目、5作目は飛ばしてしまって、久しぶりの6作目での再会という形になっている。

影憑き あらすじ

放蕩息子を絵に描いたような安積屋の跡取り円九郎は、同じく大店の息子である金吾と菊三郎に誘われるがままに三軒続き長屋の空き家に潜り込む。

そこは住んでいた本人や家族がなくなったことで空き家になっていたのだが、金吾や菊三郎はそんなことにはおかまいなしで、亡くなった人のことを悪く言っては笑い合う。円九郎も何とはなしに相づちを打っていたのだが、やがて人の気配、いや幽霊の気配のようなものを感じ始める。

近くの神社で賽銭泥棒をしていた時、この気配の恐ろしさに耐えきれなくなった円九郎は大声をあげてしまい、三人の悪さがばれてしまう。

親から店を追い出された三人は、修行のためにそれぞれ別の店へと預けられることになる。そうして、円九郎が預けられたのが、つぶれて夜逃げをした商家や、首つりや人殺しがあったような家からでも平気で小道具を買い取る「古道具屋 皆塵堂」だった。

シリーズ途中からでも十分に楽しめる

皆塵堂の主である伊平次、皆塵堂で働く小僧の峰吉、霊が見える太一郎に、魚屋の巳之助、鳴海屋のご隠居の清左衛門、そして忘れてはいけないのが猫の鮪助(しびすけ)。

いつもの面子がいつものように活躍するシリーズものなのだが、彼らが登場するたびに自己紹介的な文章が挿入されているので、初めてこのシリーズを読む人でも、何の戸惑いもなく物語の中に入って行くことができる。

言い換えれば、シリーズの常連にとっては、この自己紹介的な文章がややまどろっこしくもあるのだが、そこはちゃちゃっと読み飛ばしてずんずんと先に進んでいけば、あっという間にゾクっとするような展開がやって来る。

感想

安定の面白さ。

常連の登場人物たちが、まったくぶれることなくいつもと同じような行動で、いつもと同じような活躍をするので、安心して読むことができる。

同じような活躍ばかりだと普通は飽きてしまうのかもしれないが、このシリーズでは常に霊の影がちらちらするので、そちらへの恐怖心と好奇心がマンネリ化をうまい具合に打破しくれる。

今回の主人公である円九郎の駄目さ加減は、まったくもって同情の余地がなく、感情移入が少しばかり難しかったので★ひとつマイナス。

幽霊が出るということで躊躇している人もいるかもしれないが、読者を怖がらせることがテーマの作品ではないので、恐がりな人でも十分読める作品になっている……と思う。

とりあえず、怖い系はすべて駄目で、真夏のミステリーなんちゃらかんちゃらとタイトルのついたテレビ番組すべて見ないようにしている自分でも、本作は十分に最後まで読める、といえばその怖さレベルを何となく想像してもらえるだろうか。

お薦め度:★★★★☆