[感想]天地明察/冲方丁

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天地明察
冲方 丁 著/
お薦め度:★★★★★

江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること―。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!早くも読書界沸騰!俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。(「BOOK」データベースより)

本屋大賞万歳! 大賞受賞作でなかったら、絶対に読みそこねていた。

基本的に時代小説は苦手です。時代背景とか、当時の慣習とか、将軍様がだれそれでなどなど、説明調の文章が並んだ途端に思考が途切れてしまって、そうして嫌になってしまうのです。なので、この「天地明察」も普通だったら絶対に手にしない類の作品でした。ですがそこは「2010年本屋大賞 大賞受賞作品」。さらには「天地明察」という何やら凜としたタイトル。どうしても気になってしまい、手にすることに。

そうして大満足の読書時間。

碁打ちであり数学者でもある主人公渋川春海。そのひょうひょうとした性格に寄り添うかのように、この作品自体も淡々と描かれています。改暦という天下の一大事を今まさに行おうとしているにしては、抑えたストーリー展開です。ですが、だったら物語に起伏がないのかと言えばそんなことは全くありません。淡い色彩で描かれた水彩画のように、物語が心の中にじんわりとしみこんで来ます。

多くの人の思いを背負い、改暦に邁進する渋川春海の姿は感動的ですらあり、特に本書残り1/3あたりからは、涙、涙の連続となってしまいました。

Amazon.co.jpのレビューなどを見ても「泣けた」という表現はほとんど見かけませんし、作品からも「泣かせよう」とするあざとさのようなものは全く感じられません。

にも関わらず、私の中の何かがこの作品に呼応してしまったようで、登場人物たちの何気ない会話のシーンですら、その背後にある今までの苦労、失望、喜びなどをつい思い返してしまい、そうしてティッシュを片手ににぎりしめる羽目に。

浅田次郎の「蒼穹の昴」以来の、久々の感涙作品となりました。