[感想]ジョーカー・ゲーム/柳広司

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ジョーカー・ゲーム
柳 広司 著/角川文庫
お薦め度:★★★★☆

結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく…。吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイ・ミステリー。(文庫裏表紙より)


軽妙洒脱なスパイ物語

時は昭和10年代。極秘裏に作られたスパイ養成期間「D機関」の面々とそれらにかかわる人々とのだましだまされる物語が5編おさめられた連作短編小説。

スパイ小説といっても、ハリウッド映画にありがちな超人離れした華々しい活躍とは一線を画す作品です。

スパイ達は影の存在であることに徹底し、偽りの人格や経歴を手に入れ、人々の心理をたくみに読み取り、そして操ることで、それと気づかれぬままに任務を遂行して行きます。

特に、前半3編は傑作ぞろいで、D機関の面々のあまりの優秀さに、任務を完了したその時にはある種の爽快感と興奮を覚えるほどでした。

しかしながら、後半2編は大きく失速。全5編が同じクオリティであったなら間違いなく★5つだったのですが、そういうわけで残念ながら★1つ分マイナスです。

とはいえ、面白いことに間違いはなく、また気軽に読むことができる作品ですので、通勤のお供や気分転換には最適です。

でも個人的には、このテイストのままの長編作品をぜひ読んでみたいところ。結城中佐以外は本名も明かされないD機関のメンバーたちですが、彼らの心理をもう少しのぞき見てみたい気がします。