[感想]夏と花火と私の死体/乙一

 夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

夏と花火と私の死体
乙一 (著)/集英社文庫  お薦め度:★★★★☆

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか? 死体をどこへ隠せばいいのか? 恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。(文庫裏表紙より)


表題にもなっている「夏と花火と私の死体」で第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞した乙一のデビュー作。

乙一という全くもってシンプルな名前のこの作家が、かなりすぐれた作品を書いているらしい……という話はちらほら耳にしていた。けれど、今日まで手が出なかったのは、なんといっても私の苦手な「ホラー」に属する作品であるということからだった。

けれど勇気を出して読んでみると、乙一は確かにすごいと思った。

「夏と花火と……」のラストは、ややインパクトに欠けるような気がしたが、それでも目の前に鮮やかに情景が浮かびあがってくるその描写力といい、読者を引き込んで離さない物語のテンポというか、構成力といい、こりゃあただ者じゃないな、という感じだ。

同時収録の「優子」にしたって、流れるような筆運びの見事なこと。読んでいて、ん?とひっかかる部分、読書のペースが乱されるような部分が全然ないのだ。

まぁ、強いて言うならば。
ラストにどんでん返しを持って来よう、持って来ようと意識するあまりか、最後の最後の詰めがちょっと甘い感じがなくもないが、なんといってもデビュー作(とデビュー間もない時期の作品)でこの完成度なのだから、最近の作品ではどんなことになっているのだろうかと、怖いような楽しみなような(~o~)

ただ願わくば、私の苦手なホラー分野から脱出して、ぜひぜひミステリ畑の作家さんになって欲しいところ。そうしたら、片っ端から作品、買いあさってしまうのだけれども。