[感想]MISSING(ミッシング)/本多孝好

 MISSING (双葉文庫)

MISSING
本多孝好(著)/双葉文庫 お薦め度:★★★★☆

「このミステリーがすごい!2000年版」第10位!第16回小説推理新人賞受賞作「眠りの海」を含む処女短編集、待望の文庫化! (文庫裏表紙より)


味わいのある短編集だと、かなり昔から耳にしていた。何といっても、刊行されたのが1999年9月、文庫になったのが2001年11月。私が今まで手にしていなかったのが不思議なくらいだ。

収録されているのは、「眠りの海」「祈灯」「蝉の証」「瑠璃」「彼の棲む場所」の5編。

「眠りの海」で小説推理新人賞を受賞しデビューした作家さんだったので、もうすこしミステリ色が濃いかと思ったが、文学作品といっても十分に通用するような内容で、するするっと物語に吸い込まれて行くかのようなとっつきやすさと、読んでいる最中、そして読んだあとに「何か」がじんわりと心の中に沁みてくるかのようなこの感覚は、結構癖になるかもしれない(~_~;)

ネットで検索をかけて、他の方々の読書感想などを見たところ「瑠璃」の人気が高かったようだが、私は断然「蝉の証」が良かった。

残りわずかな人生を生きている老人の心の葛藤、思い……そんなものが上手く表現されていて「老人」を経験したことのない私でも、その切なさのようなものが胸の奥底にまで響いて来た。

ミッシングというタイトルにある通り、この作品に収められている作品たちは、みな「死」と密接な関係にある。ある者は死を選び、またある者は生きることを選択する。一歩間違えれば暗くなりがちなこれらの作品なのだけれども、不思議なほどに読後感は悪くない。作者の淡々とした語り口のせいなのかもしれない。ハッピーエンドが大好きな……というよりは、ハッピーエンドでなくては許せない私でも、十分に読み応えのある作品集だったと言える。

ひとつ残念だと思ったのは。

作品のはしばしに村上春樹の影を感じてしまうこと。どれだけ作品が素晴らしかったとしても、春樹さんのようなビッグネームに太刀打ちできるはずもなく、いかにも春樹さんっぽい表現を見るたびに、ふっとしらけた気分になってしまうことが何度かあった。

表現の妙にこだわらなくたって、登場人物たちの性格描写とストーリー展開とで、読者たちを十分に魅了できるだけの力のある作家さんなのだから、春樹さんの呪縛(?)からは、ぜひ早急に逃れてもらいたいものだと思う。

優しい切なさにひたりたい人にお薦め♪