[感想]さらば、愛しき鉤爪 /エリック・ガルシア

さらば、愛しき鉤爪 (ヴィレッジブックス F カ 1-1)

さらば、愛しき鉤爪
エリック ガルシア (著)、酒井 昭伸 (翻訳)/ヴィレッジブックス
お薦め度:★★★☆☆

おれの名前はヴィンセント・ルビオ。ロサンジェルスが根城のケチな私立探偵だ。つまらない仕事のかたわら、謎の死を瑞げた相棒アーニーの死因を探っている。そんなおれを”評議会”がけむたがっているのは承知の上だ。ところでおれは、人間じゃない。人間の皮をかぶり、人間にまぎれて暮らしているヴェロキラプトル―恐竜だ。ああ、それにしても昔はよかった…。世界中で熱狂の渦を巻き起こした恐竜ハードボイルド、ついに登場!(文庫裏表紙より)[原書:Anonymous Rex


そうだ、私はハードボイルドが苦手だったんだ。

作品を読み進めているうちに、私は、はたとその事実に思い当たった。少し前に読んだフロスト警部シリーズWinter Frostが、なかなかにステキな作品で、でもってこれもまた「ハードボイルド」と呼ばれていたものだから、恐竜ハードボイルドといわれるこの「さらば、愛しき鉤爪」も、何の抵抗もなく手に取った……、けど、フロストほどには楽しめなかった。

多少、ストーリー展開に無理はあっても、主人公の魅力で読ませるフロストとは対照的に、こちらの恐竜物は、プロットがなかなかしっかりしている。アクション、ロマンス、裏切り、友情、ほろりとさせる最後の着地。ありとあらゆるお楽しみの要素が、この一冊にぎゅっ!と詰まっているといっても過言ではない。

だが、しかし、だ。

ストーリー展開とは別に、私はどうしても主人公の恐竜、ヴィンセント・ルビオを好きになれなかった。彼の行動のひとつひとつ、ちょっとした言葉のやりとりに、どうしようもなく違和感を覚えてしまうのだ。そうなってしまったら、正直なところ、もう物語どころではない。読んでいても、あまり面白く……ない…… (~_~;)

……というわけで、フロスト警部シリーズ以外のハードボイルドは、心して取り掛かるようにしよう、と思った次第。

ちなみに、私はダメだったけれど、この「さらば、愛しき鉤爪」は、世間ではすこぶる評判のいい作品である。続編の鉤爪プレイバックもすでに翻訳出版されている。また翻訳者の酒井 昭伸氏は、訳すにはかなり難解であったろうハイペリオンのシリーズを手がけているだけあって、本書でも、翻訳の文章そのものはとても自然で、訳書にありがちな読みにくさはなかった。

原書の英文はかなり難しいと聞くので、英語にかなりの自信がある人以外は、とりあえずは翻訳書から取りかかるのが得策かもしれない。