[感想]からくりからくさ/梨木香歩

 からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ
梨木香歩 著/新潮文庫 ★★★☆☆

祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして──。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。(文庫裏表紙より)


同じ作者による「西の魔女が死んだ」 が抜群に良かったので、引き寄せられるようにして、手にとった作品。

西の魔女と同様、不思議に心地よい雰囲気が物語全体に漂っている。人によって感じ方はさまざまなのだろうけれど、私はその中に生きること・生活することの愛おしさを見たような気がする。

「生きる」と言ったって、人生の目標がどうの、生きる意味がどうの……といったことではない。もっと根源的なもの。あえて言うならば、太古から受け継がれて来た生物の本能としての「生」とでも言ったらよいだろうか。生きているから食べて、寝る。悩みもするし、恋もする。そこには難しい理屈や動機付けなどはいらない。生きているのだから、そのひと言ですべてが説明されるかのような空間。

この空間に心を泳がせることのできる人ならば、この物語もそれなりに楽しむことはできるだろう。けれど、ストーリー展開にあらが目立つことは否めない。年頃の女の子4人の共同生活が描かれているのだが、三人称で、しかもめまぐるしく視点が変わるものだから、しまいには誰が何を感じてどうしていたのか、さっぱりわからなくなってしまうのだ。

……と○○は思った。

の一文に到達するまで、誰の考えなのかさっぱりわからなかった、ということもしばしば。確かに一人称の小説ではない。けれども、これはちょっとまずいのではないだろうか??

そんなこんなで、ほどほどの感情移入しかできないままに、物語を読み終えることとなってしまった。素材も雰囲気も良いだけに、残念でならない。作者がいつかどこかで文章作法にこだわりをもって、びっくりするような「大化け」をしてくれたなら、もっともっと読まれる作家さんになると思うのだけれども。