[感想]模倣犯/宮部みゆき

 模倣犯〈上〉

模倣犯〈上〉
宮部みゆき 著

公園のゴミ箱から発見された女性の右腕。それは「人間狩り」という快楽に憑かれた犯人からの宣戦布告だった。比類なき知能犯の狂気に立ち向かう第一発見者の少年と孫娘を殺された老人、二人を待ち受ける運命とは?(C)「MARC」データベース


やっと上巻が終わったところなので、まだ結論づけをするのは早いのだが、今までの段階で言えるのは、宮部作品としては、格段に読後感が悪いということ。

狂気に駆られる殺人鬼、命乞いをしながら殺されていく被害者たち……。こういうシチュエーションは、私のもっとも苦手とするところ。殺すなら殺すで(なんか表現が過激だけれど(^^;))ばっさりとやって欲しいものだと思う。スプラッターと呼ばれる小説のほうがまだ読んでいて気分がいいんじゃないかとさえ思う。

無力な被害者たちが、じわじわといたぶられながら殺されて行く様を、宮部みゆきのあの筆力で丁寧に描かれた日にはもう……、どど?んと心の底が重くなる。それがこの作品の狙いなのだとしたら、私とは相性の悪い作品だった、と言うしかないのだろうが。

残された下巻。
このまま放り出してしまったら後味が悪いことこの上ないので、もろちん読むが、あぁ?、お願いだから多少の救いなり、爽快感なりをラストに持って来て欲しい。


 模倣犯〈下〉

模倣犯〈下〉
宮部みゆき著/お薦め度:★★★★★

「胸くそ悪い」という言葉がぴったりと来るような殺人シーンの連続に、かなりうんざりしていた上巻だったが、下巻に入ってからは、犯人を追いつめて行く様を中心に描かれており、その点では安心して読むことができた。

で、だ。
この作品をどう評価したらいいのだろうと、正直とてもとまどっている。とてつもなく大きな物語だったことは確かだ。作者の主張もひしひしと伝わって来る。私はどちらかと言うと、細切れ時間で本を読むほうなのだが、この本に限っては、読み終えるまで何もする気になれず、時間の許す限りただひたすら読んでいた。作品の中に引き込まれたし、確かに面白かった。ならば、諸手を挙げて賞賛できるかと言えば、これが微妙なのだ。

まず長い。長すぎる。
書き込んで行くうちに長くなってしまったというのはわかるが、無駄な部分をそぎ落とすことも時には必要なのではないかと思う。これほどまでに冗舌に語る必要があったのか、それは疑問として残る。また、複数の人物の視点から物語が語られているため、すでに知っている事項までもが複数回に渡って述べられておりやや辟易した部分もある。また同じような理由から、時間が行ったり来たりするため、緊迫感が薄まってしまった感もある。すごろくのゲームで「3コマ戻る」が出てしまった時のような、虚脱感とでも言おうか。

更に。
登場人物があまりに多すぎて、この人!というべき主役がいなかったため、感情移入が難しくなってしまった。もう少し絞るべきは絞って、ひとりの人物を中心にすえたほうが、物語が生きて来たろうと思う。

それでも。
私はこの作品に、5つ★をつけたいと思う。読み終えた瞬間のあの充足感は、やはり何物にも代え難い。久々に読書の醍醐味というものを味わったと思う。それに、宮部作品だと思うから、期待が大きすぎてあれこれ難点を挙げてしまうのだけれども、これが他の作者の作品だとしたら、文句なく5つ★をつけていたに違いない。