[感想]ハイペリオン(上・下)/ダン・シモンズ

 ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈上〉
ダン・シモンズ著/酒井 昭伸訳/ハヤカワ文庫
お薦め度:?????

28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した!時を超越する殺戮者シュライクを封じこめた謎の遺跡―古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める”時間の墓標”が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く”時間の墓標”の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送りだしたが…。(文庫裏表紙より)[原書:Hyperion


SFの傑作として、世間の評価の高い作品なので、あちらこちらの書評サイトに、この作品の感想が掲載されている。が、それらの感想を読んでも正直なところ、あまり読みたいとは思えなかった。

「アウスター」だの「シュライク」だの「時間の墓標」だの、ややこしい言葉が飛び交う上に、7人の「巡礼者」などと言われると、もうこの段階で挫折。というわけで、今日の今日まで、読まずに来たのだけれども、いざ自分で読んでみてわかったのは、物語自体があまりにも壮大で、その世界観をしっかりと持っているものだから、実際に読んでみないことには、素人が何をどう語ってみたところで、この充実した読後感を文章で伝えるのは非常に難しいのだということ。

なので、私がここで何を言っても、SFが苦手な方には上手く伝わらないと思うのだけれども、それでは書評コーナーにならないので、ちょっとだけ(^^;)

上巻では、ハイペリオンへと送り出されることになった7人のうちの3人が、各々のハイペリオンとの因縁を語るという設定になっている。

第一章の「司祭の物語」は、どこか切なく孤独感に満ちている。読んでいる途中、なぜか私は「猿の惑星」を思い出してしまった。第二章の「兵士の物語」は、少しばかりエロチックな恋物語に気を取られていると、驚きの結末に足をすくわれる。第三章の「詩人の物語」は、出版界に対するちょっとした諷刺も含まれているのだろうか。

ひとつひとつの物語がきっちりと独立しており、またそれぞれ語り口も違うので、傑作短編集を読んでいるような気分でページを繰っていると、あっという間に上巻は終了。下巻では、残りの人々の物語が披露されると思うので、こちらも早く読まなくては。


 ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈下〉
ダン・シモンズ著/酒井 昭伸訳/ハヤカワ文庫
お薦め度:?????

迫りくるアウスターの脅威と、殺戮者シュライクの跳梁により惑星ハイペリオンは混乱をきわめていた。連邦政府より命令をうけ、この地に降りたった、神父、軍人ら経歴もさまざまな七人の男女は、一路”時間の墓標”をめざす。その旅の途上で明らかにされていく、数奇な宿命を背負う彼らの波瀾にみちた人生の物語とは…?あらゆるSFの魅力を結集し、卓越したストーリーテリングで描く壮大なる未来叙事詩、ここに開幕!(文庫裏表紙より)


これはすごい物語かもしれない。上巻を読み終えた時、そう感じた。その勢いのまま手にとった下巻。

が、正直なところ、ここに来て何だかよくわからなくなってしまった。どんどんどんどん……出てくるSF的設定に、元来のSF苦手意識が頭をもたげはじめてしまったのだ。高校に行った途端、数学がわからなくなってしまい「あれ、こんなはずじゃなかったのに」と思っている間にも、取り残されて行ってしまうあの状況にちょっとばかし似ている。

重厚な物語は、行間を読みとる隙を読者に与えず、ただただ物語の力のみでもって読者をその世界にひきずりこんで行く。その圧倒的筆力が、どうやら私には威力がありすぎたようで、読み終えたとたん、ぐったりと疲れてしまった(^^;)

が、物語はここに来てもなお、すべてが語り終えられたわけではない。訳者あとがきに「これまでに提示された数々の謎は、続篇『ハイペリオンの没落』において一挙に解決され、巡礼者たちもそれぞれの運命とついに決着をつけて、物語は堂々の完結を見ることになる。」とあるように「ハイペリオン」はまだまだほんの序章。続編を読まなくては、何も終わらない。

けれど、ちょっと疲れた……のも事実。
少し間を置いてから、続編を読みたいと思う。