[感想]天狗風─霊験お初捕物控<2>/宮部みゆき

 天狗風―霊験お初捕物控〈2〉 (講談社文庫)

天狗風―霊験お初捕物控〈2〉
宮部みゆき著/講談社文庫 お薦め度:★★★★☆

一陣の風が吹いたとき、嫁入り前の娘が次々と神隠しに――。不思議な力をもつお初は、算学の道場に通う右京之介とともに、忽然と姿を消した娘たちの行方を追うことになった。ところが闇に響く謎の声や観音様の姿を借りたもののけに翻弄され、調べは難航する。『震える岩』につづく“霊験お初捕物控”第2弾。(文庫裏表紙より)


時代物はほとんど読まない私だが、宮部作品ともなれば話は別。また、時代物/現代物という垣根も、彼女の作品の場合は、ほとんど意識する必要もないくらい読みやすい。

お初捕物控第1作の「震える岩」では、主人公のお初が超能力者であるがゆえ、そこはかとない寂しさや孤独感が物語のそこここに漂っていたが(だからこそ私は、超能力者の登場する宮部作品はちょっと苦手だったのだけれども)今回のシリーズ第2弾では、すでにお初の特殊な能力は身近な人には周知の事実であるため、孤独感や疎外感がほとんどなく、その分、気軽に読み進めることができた。

神隠し……、普通の推理小説ならば、最後の最後には神隠しの謎が暴露され、犯人がどのような手口で娘たちをさらっていったのかが明らかにされるところだろう。けれど、この作品はミステリの形態こそとってはいるものの、神隠しの犯人は正真正銘の「もののけ」である。いかにもののけの正体を突き止め、それを封じるか、そこに焦点が絞られて行くのだ。

一歩間違えれば、ただのホラー作品だ。
けれど、そこは宮部みゆきのこと。登場人物たちの細やかな描写が物語に圧倒的な真実味を帯びさせて行く。物語のすみっこに時折のぞく「くすっ」と微笑する程度の軽口の数々も心地よい。「心とろかすような」では、警察犬マサが絶妙の筆さばきで描かれていたが、この作品に登場する黒猫の「鉄」がこれまた、心憎いばかりの活躍ぶり。

老若男女、犬まで描けるのか……と思っていたけれども、これは訂正。ひとたび宮部みゆきの手にかかれば、黒猫までもが生き生きと物語の中に立ち上がって来る。読んで損のない秀作。