[感想]絡新婦の理/京極夏彦

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絡新婦の理
京極 夏彦 著/講談社文庫
お薦め度:★★★☆☆

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな―二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第五弾。(文庫裏表紙より)


ついに1400ページを超えましたよ(解説含む)。

京極堂シリーズ第5弾。

どれもこれも長い話ばかりだというのに、読み終わるたびに「あぁ、シリーズの残り作品が少なくなって来ちゃったな」と一抹の寂しさを感じるほどの中毒性。京極ワールドにすっかりはまっております。

さて「絡新婦の理」。あまり見慣れぬ字面ですが、これで「じょろうぐものことわり」と読みます。ふりがなを見て、はじめて理解できました、はい。

前作「鉄鼠の檻」は禅僧がわらわらとたくさん出てきましたが、今作ではうってかわって、女系家族に女学院と多くの女性たちがそこかしこに登場します。

事件の(そして張り巡らした網の)中心に居座っているであろう絡新婦は、自らが手をくだすことなく、周到な計画でもって次々と人をあやめていきます。

10人以上の人が犠牲になり、数名の容疑者の名があがり、さらにそこから派生して関係者が多数。

人間関係を整理するのがなかなか大変で、にわとり頭の私などは、途中で事件の流れを見失いそうになること数度。そのせいか、残念ながら今作はいつもほどには作品の中にのめり込むことが出来ませんでした。

それでも、京極堂の憑きもの落としのシーン見たさに、何とか最後までたどり付きましたが、この結末は……。特に女性はかなり苦いラストに感じるかもしれません。

一歩間違えたなら、とてつもなく後味の悪い作品になってしまうところをそれでもかろうじて踏みとどまったのは、ラストシーンが冒頭部分に繋がるというその構成の妙と、はらりはらりと舞い散る桜の美しさゆえでしょうか。

それにしても京極堂は相変わらず格好いいですな。

中善寺は謎に対して解答を出すのではなく、謎の方を一般の人間に解るレヴェルまで解体するのである。謎の、謎たる背景を揺さぶって、謎自体が無効化してしまうような状況を擬似的に造り出すだけなのだ。つまり、現実を一旦反古にしてしまって、まやかしだろうが詭弁だろうが、謎が謎たり得ないようなもうひとつの現実を表出させるのが彼のやり方なのだ。