[感想]Y/佐藤正午

Y
佐藤正午/ハルキ文庫 お薦め度:★★☆☆☆

ある晩かかってきた一本の奇妙な電話。北川健と名乗るその男は、かつて私=秋間文夫の親友だったというが、私には全く覚えがなかった。それから数日後、その男の秘書を通じて、貸金庫に預けられていた一枚のフロッピー・ディスクと、五百万の現金を受け取ることになった私はフロッピーに入っていた、その奇妙な物語を読むうちにやがて、彼の「人生」に引き込まれていってしまう。この物語は本当の話なのだろうか? 時間を越えた究極のラブ・ストーリー。(文庫裏表紙より)


この作品が日本語で書かれたもので、本当に良かった。
もしもこれが洋書だったら、また私は「ひょっとして英語力不足で、意味が取れなかった??」と束の間悩まなければならなかったかもしれない。

それほどに、世間の評価と私の感じたものはかけ離れている(ような気がする)。
世間では、この作品をグリムウッドのリプレイ、北村薫のスキップに匹敵するタイムトラベル物の傑作だと言う。けれど、私にはどうしてもそう思えなかったし、それどころか平均点の3★すらつけられない。

結末の気になる物語で、確かに最後まで一気に読み通せたけれども、どこかで何かが決定的に足りないような気がしてしまう。18年の時を遡った北川健の女性に対する想いだとか、主人公秋間の心の揺れだとか、そういったものが、どうにもストレートに伝わって来ない。

もっと言ってしまえば、たった一言、二言言葉を交わしただけの女性を救うために、今の人生を捨てて、18年前に戻ろうなどと思えるものなのだろうか。その疑問が最初から最後まで、私の脳裡にべったりと貼り付いたまま、読み終えた今となっても、やはり何ら結論を見出していない。物語の大前提の部分で躓いてしまったものだから、結局感動も、余韻も、何にもなし。