[感想]蒲生邸事件/宮部みゆき

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文庫として発売されるとほぼ同時に買ってあったのですが、手に取るまでにずいぶんと時間がかかってしまいました。この作品は、時間旅行者が登場するために「SFミステリー」といった言われ方をすることがあるのですが、元々SFがあまり好きでない私は、この部分で躊躇してしまっていたのです。

それでも、読み始めてみれば何のことはない。確かに時を遡るのだからその部分ではSFだし、蒲生大将の死因を云々する部分は、ミステリーとも言えるでしょう。しかしこの作品は、そういうカテゴリーを突き抜けてしまった、もっと良質の小説だということを知りました。

宮部みゆきの物語構成力や文章力の素晴らしさは前々から知ってはいました。けれども「歴史」という大きなものを取り扱ったにもかかわらず、それらが最後まで破綻することなくきっちりとひとつに収束している様は、まさに圧巻でした。ラストシーンは涙なしには読めないですし、読み終えた後は、しばらくぼーっとしてしまうほど。

生きることの意味、人生の大切さ、懸命に前を向いて歩いて行くことは時として辛いけれど、それに立ち向かって行く勇気……。そういった諸々のことが(本文中で押しつけがましく書かれているわけではないのに)ふと頭の中を過ぎったりもしました。こういう作品を読んでしまうと、純文学なんてもういらないなぁ、なんてついつい思ってしまいます。

お薦め度:★★★★★