[感想]クリスマスツリー/ジュリー・サラモン

121502

新潮文庫12月の新刊です。書店で平積みされているのを見て、ついつい買ってしまいました。

ロックフェラー・センターで働く主人公の<私>には、その仕事のひとつとして、毎年ロックフェラー・センターに飾る巨大なクリスマスツリーを探し出すというものがあり、その仕事の過程で知り合ったのが、修道女(シスター・アンソニー)でした。ツリーの思い出を語るシスター・アンソニーと<私>の心の交流……とでも言えばいいでしょうか。極めて淡々としたペースで物語は進行していきます。

<私>が読者に語りかけるような形で進行する部分と、シスター・アンソニーの語りとして進行する部分、そのふたつが折り重なるようにして物語自体が進んで行くのですが、実は私はこの部分で強い違和感を覚えてしまいました。

<私>の部分は「思った、感じた」といった具合にすべてが言い切りの形(?)になっているのに対し、シスター・アンソニーの部分は、文章がすべて「です・ます調」で統一されています。これがどうも駄目だったのです。物語がぷっつりぷっつりと分断されているような気がして、なんか醒めてしまうのです。

もうひとつ。シスター・アンソニーは60歳を越えた、いわばおばあちゃんのような女性です。けれども「です・ます調」の一人語りの中の彼女は、どう見ても 20代前半程度にしか感じることができません。いきなり「あたしゃねぇ」なんて古くさい言葉を使えとはいいませんが、それでも年相応の言葉使いというものは、やはり存在するはずです。映画やドラマなどと違って、言葉でしかその年齢を読者に伝えられないのですから、やはりそこに何らかの工夫が欲しかったと思います。

修道院でずっと育って来たから、純真な心を持ったままだから、だからあのような言葉でも構わないのだと、そういう考え方も出来るでしょう。けれどこの私なんぞは読んでいる途中で、

<私>とシスターが結婚するなんてこと、ありかなぁ? あっ、でもシスターは結婚できないんだっけ……。そもそも<私>は結婚してたのかしらん? う?ん、まてよ。<私>とシスターじゃ年が違いすぎるじゃないか!!

なんて、訳のわからないことを考えてしまったくらいです。
それが翻訳のせいなのか、それとも英語を日本語に置き換える上での限界なのか、その辺の所はよくわかりません。けれどもこのことによって、物語の良さが100パーセント発揮されなかったことは事実でしょう。

こういう水彩画のような作品は、ほんのちょっとのひっかかりが大きな致命傷になってしまうことがあります。太陽のような強烈な個性の持ち主は、少々の曇り空ではびくともしませんが、夜空に光る星たちは、住宅街のほんのわずかな明かりにさえも、その存在をかき消されてしまいます。それと同じことです。

というわけで、残念ながら★2つ。

お薦め度:★★☆☆☆