[感想]グッバイ・ヒーロー/横関大

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グッバイ・ヒーロー
横関 大 著/講談社
2011年5月刊
お薦め度:★★★☆☆

「困っている人がいたら助けなければいけない。それが俺のルールなんだ」―ピザと音楽を愛する人気配達人“亮太”と、立てこもり事件の人質“おっさん”が運び届ける、謎と絆の物語。


江戸川乱歩賞受賞第一作

宅配ピザ「ピザ・アルバトロス」の人気配達員 伊庭亮太がひょんなことから巻き込まれる人質立てこもり事件。

事件はすぐに解決をみますが、その時に出会った人質の「おっさん」と伊庭とのその後の不思議な交流を軸に、ほんのわずかなミステリ要素が加わって、優しく暖かい物語に仕上がっています。

けれど、何かが足りない本作。「何か残念」という言葉を近頃よく耳にしますが、まさしくそれなんです。

何が足りないのだろうとつらつら考えてみるに、登場人物に感情移入しにくいというのがあるのかと。

物語の流れから、あるいは行間から、登場人物たちの心の移り変わりや考えていることを読者は読み取ります。けれども、作者である横関さんはひょっとして読者のこの読み取る力を過小評価しているのではないかと思うのです。

あえて書かなくても良いようなことまで、主人公の言葉で再度説明されるシーンが何カ所かありました。そのたびに物語の勢いがそがれてしまい、そうして読んでいる自分も物語世界から、現実にふっと意識がそれてしまうのです。

だったら何もかもが丁寧に描かれているのかと言えばそうでもなく、書いてもらわなければわからないようなことが、そのままほったらかしになってしまったり。

読者の判断にまかせるということなのかもしれませんが、いやいや、それは書いてよ、と思ったシーンがいくつかありました。

第2部でのご都合主義の展開も、ちょっとやりすぎの感があるのですが、それでも結論を言えば、本書「グッバイ・ヒーロー」は楽しく読むことができました。

特にラストの伊庭の言葉、良かったです♪

おっさんのひょうひょうとした、それでいて心の奥底に深い闇を抱えているかのようなキャラクターも味わいがありました。

何かがね、何かがどこかで、キュッとくっついてパッと離れてちょっとした化学反応を起こしてくれたなら、とても素敵な作品になりそうな、そんな予感を覚えるのですが、残念ながら本作そのものだけを見た場合には、甘めに見ても★3つ。

まだ江戸川乱歩賞受賞後第1作ということなので、今後横関さんが大化けしてくれることを期待します。