【感想】偉大なる、しゅららぼん/万城目学

syurara

お薦め度:★★★★★

爽快、全快、万城目ワールド

「しゅららぼん」だなんてあまりのインパクトに、単行本が出版された当初には、思わず手を引っ込めてしまった本作。

2013年12月に文庫化されて、ようやく手にとることとなった。


それにしても、今回はやってくれました、万城目さん。荒唐無稽を通り越して、ある意味すがすがしくさえある弾けっぷり。

「鹿男」や「ホルモー」のような、実際にありそうで、なさそうで、でもひょっとしてあったら楽しいかも的な、日常によりそう「控えめなとんでも設定」が万城目さんの真骨頂だとばかり思っていたのに、この「しゅららぼん」は想像の上を行く非日常。

琵琶湖の周辺に散らばる日出一族。この日出一族には代々伝わる不思議な力があり、その力ゆえに今日の繁栄を築いている。力の修練のために、高校への進学と時を同じくして本家に居候することになる主人公の凉介。凉介の同級生で本家の跡取り息子の淡十郎。日出一族と先祖代々敵対関係にある棗一族の跡取りにして、これまた同級生の広海。

両家の因縁の対決が繰り広げられるのかと思いきや、話は思わぬ方向にころがって、前半のどこか脳天気な風景から、徐々に緊迫の度合いが深まって行く。

そうして終盤。

決してあざとくはないのだけれども、それでもあまりの切ない展開に、ティッシュで鼻をおさえつつ、流れる涙を左手の人差し指でぬぐいつつ

しゅららぼんなんて、ふざけたタイトルに油断してたら、このざまだよ。

と心の中で小さく悪態をつきながらの、一気読みと相成りました。

序盤に描かれた琵琶湖の凜とした雄大さ、青空に映える桜の美しさがあまりにも印象的で、だからこそ、その平和がいつまでも続いて欲しいという願いを知らないうちに自分が心の中に持ってしまっていたのか。

普通の高校生でありたいという願いとは裏腹に、日出家という、棗家という、古くから続く家の因縁と伝統との間で思わぬ事態に巻き込まれる主人公たち。その苦悩が切なくて、切なくて。

それでも、切ないままに終わったりしないのが、さすが万城目さん。ラストはちょっとありがちな展開ではあったけれど、にもかかわらずこの作品をきっちり爽やかにまとめてくれた。

荒唐無稽な話が好きな方には、特にお薦めの1冊。