【感想】月光ゲーム/有栖川有栖

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お薦め度:★★★★☆

えっ、火山が爆発だって

有栖川有栖のデビュー作にして、学生アリスシリーズの第1作目となる本書「月光ゲーム」。

学生アリスシリーズは、そのシリーズすべてがクローズドサークルものになっているのだけれども、ここではなんと眠っていたはずの山が爆発。山中の元キャンプ場でキャンプをしていたアリスたち一行とそこで出会った学生たちが麓への道をたたれてしまう。そこで起きる殺人事件、降り注ぐ火山弾。

でも、山ってそんなにいきなり噴火するものなの? そもそもその前に立ち入り禁止とかになるんじゃないの?

なぁんて疑問はこの際封印して、スマホのない時代のクローズドサークルものにとっぷりと浸りながら読み進めると、あはっ、面白い、面白い。

多くのクローズドサークルものは、殺人鬼に対する恐怖がメインになるものなのだけれども、この作品ではさらに火山の噴火という自然の脅威が追い打ちをかける。いや、追い打ちどころかこちらのほうが恐怖という点では大きいのかもしれない。そこに居合わせたメンバーたちが、サークルごとにすでに親しい間柄であり、またサークルの垣根をこえて恋(のようなもの)が生まれたりしていることもあって、疑心暗鬼といった感情がさほど強くない。

殺人犯は知りたい、知らねばならないと思いつつも、自分の親しいあの人でも、この人でもないはず……といった仲間意識が強く働いて、そこに緊迫感は感じられない。それよりもむしろ、彼らが逃れるべきは噴火によって降り注ぐ火山弾の数々。

自然の脅威と対峙しながらの犯人捜しは、殺伐とすることなく、けれども読み手を引き込んで離さない緊張感を保ちつつ、あれよあれよという間にラストへとたどり着く。

主人公である有栖の青臭さ、対して先輩である江神さんの安定感、ふたりの個性が作品にさらなる深みを与えている。ラストもさわやかで、これは次の「孤島パズル」も読まなくちゃ、と思った次第。