[感想]死神の浮力/伊坂幸太郎

082801

お薦め度:★★★☆☆

犯人が胸くそ悪すぎる

前作「死神の精度」を読んでいないので、細かい仕掛けのようなものに気づけないまま読み終えてしまった可能性はあるが、前作未でもとりあえずは何ら問題なく読むことができる。


で、本作「死神の浮力」なのだが。

人の心をもてあそぶことに快感を見いだすサイコパスの本城によってひとり娘を殺された山野辺夫妻。憎い犯人が裁判の一審判決で無罪を勝ち取った後、彼に復讐を果たすべく行動を起こす。

そんな山野辺夫妻についてまわるのが、人に生死の判定を下すことを仕事とする死神の千葉。

暗くてやるせないストーリー展開ながら、千葉の普通の人とは異なる、ちょっとずれた行動がそこかしこで物語の緊張感を解きほぐす。

物語全体としてみれば、たぶん良くできた作品なのだろうと思うのだけれども、私自身は上手く馴染むことができなかった。

とにかくサイコパスの本城が、あまりにあまりな人でなしで、彼の行動のひとつひとつが胸くそ悪すぎるのだ。ここまで不快になるってことは、逆に言えば伊坂さんの創作の能力が優れているからってことになるのだろうが、だからといって本を読んでいて不快になるのは、ちょっと勘弁だ。

伊坂さんの描く悪人は、徹頭徹尾どうしようもない悪人であることが多くって、でもって自分はそんな描かれ方をする悪人が、どうしようもなく苦手なものだから。

結果として、あまり良い伊坂作品読者になれないとういう、ジレンマってほどではないけれど、なんとなくモヤモヤとした思いをいつも抱えてしまう。

この作品で一番印象に残ったのはどこだろうとつらつら考えてみると、そう、あそこだ。山野辺の父親が死を目前にして彼に語る

「先に行って、怖くないことを確かめてくるよ」

の言葉。これにはうるっと来た。

生きているということ。死ぬということ。親というもの、子というもの。いやが上にもあれこれ考えさせられて、ちょっとどんよりしてしまった。

読後感は悪くないという感想が多いようだけれども、うーん、どうかな。