[感想]神様が殺してくれる/森博嗣

071801

お薦め度:★★★☆☆

美しさが招いた悲劇

実は森作品を読むのは初めてだ。

ずっとずっと気になっていたのだけれども、気づいた時には大御所になりすぎていて著作もたんまり。どれから手をつければいいのか考えあぐねているうちに、ずるずると今まで来てしまった。

今作「神様が殺してくれる」は、シリーズ物ではないとのことだったので、チャンス到来!とばかりに飛びついた。


そうして、1ページ目から、大いに予想を裏切られる。

あれ、森さんって、ものすごくパワフルに突き進んで行くタイプの作品を書く人ではなかったの?

自分の単なる思い違いなのか、はたまたこの作品が特別なのか、とにかくページの、文章の、そして単語のひとつひとつに至るまで、あらゆるところに妖しい静けさが漂っているのだ。

主人公のレナルド・アンペールの一人称で語られる物語は、現在から過去を述懐する形で始まる。

大学時代に、半年間だけルームメイトとして一緒に暮らしたことのあるリオン・シャレット。殺人現場に居合わせた彼が、犯人としてレナルドの名前をあげる。

突然の出来事に驚くレナルド。その後も続く殺人事件……、そうして数年の時を経て再会するレナルドとリオン。

男とか女とかの性を超越して、まるで妖精のように美しいリオン。陶器のような肌にブロンドの髪。神秘的とも表現できる美しい彼の存在こそが、この物語世界を構築しているといっても過言ではない。

そうして、その彼を頭の中でイメージしつつ読み進めることになるのだけれども、あろうことか私の頭の中に浮かんで来たのは

栗原類さん。

うーん、何か違うぞ。そもそもブロンドじゃないし。日本人だし。

必死になって否定してみるものの、どうしても彼の姿が頭から消えてくれない。なぜだ、なぜこうなる?と思いつつも、諦めて先に進む。

レナルドの周囲に見え隠れするリオンの気配と重なるようにして、私のまわりにも見え隠れする栗原類さんの姿。しかもご丁寧にシルクハットまでかぶっている。なってこった。

そんなこんなの読書になってはしまったものの、全体を通して漂う静けさが、ストーリーとは別の部分で不思議な読書時間をもたらしてくれたのは間違いない。

それほど期待していなかっただけに(ごめんなさい)思わぬ拾いものをしたような感覚。