[感想]ビッグデータの正体/ビクター・マイヤー=ショーンベルガー他

061901

世の中の見え方がガラッと変わってしまう好著

ビッグデータと聞けば、

たくさんのデータをかき集めてそれを利用することでしょ。ほら、アマゾンとかgoogleが得意そうなやつ……。

その程度の知識しかなかった自分は、本書を読んでびっくり仰天。ビッグデータはここまで来ていたのかという驚きの連続だった。


かつて、ヒトゲノム(全遺伝情報)を解読には10年が必要だった。ところが現在ではわずか15分で完了することができるという。情報を処理するスピードが飛躍的に向上しているのだ。

その結果、データといえば無作為抽出によって一定量の情報を扱うことが当たり前だった時代から「n=全部」、すなわち膨大なすべてのデータを元として、そこから何らかの情報を引き出すことが主流になりつつある。これがビッグデータだ。

そうしてこのビッグデータを読み解く上で大切なのが「因果関係より相関関係」。

データからある結果が導きだされた時に、なぜこうなったのかという「因果関係」をあれこれ考えることはしない。

たとえばハリケーンが近づくとポップターツ(菓子)が売れるという相関関係が読み取れたなら、大切なのはその菓子が売れるという事実であって、なぜ人々は菓子を買いたくなるのだろうと考えることではないというのだ。

物事には原因と結果があると長年教え込まれて来た身としては、言われていることは頭の中では理解できても、感覚的になかなかしっくりとは来ない。どうしても原因・理由を考えたくなってしまう。けれど、その感覚を乗り越えてこそ、ビッグデータの持つ可能性をもっとはっきりと知ることができるのだろうと思う。

けれど、すべてにおいてビッグデータ万歳となるわけではない。

未来への不安としてまずあげられているのが、プライバシーの問題。私たちが日々googleで検索している検索語がそのまま収集されているのは有名な話だ。さらにはアマゾンで気になる本をクリックすればそのデータがアマゾンに渡り、twitterやfacebookに投稿をすれば、その内容はもちろん運営会社に流れる。

より多くのデータを収集することで企業が優位に立てるのだから、こぞって集めようとするのも当然の流れである。

また、あらゆる人々の行動が、ビッグデータから導きだされた結果として予測できるのだとしたら、まだ犯罪行為に手を染めてない人間を、その可能性が高いからということで監視しようとする方向に行かないとも限らない。

けれど「まだ起こってもいない行為の責任を取らせたり、制裁を加えたりする道具にビッグデータ予測が使われるとすれば、やはり危険このうえない」と著者は言う。

なぜなら

ビッグデータ予測が完璧で、アルゴリズムが我々の未来を寸分違わずはっきりと見通せるなら、我々の行動はもはや洗濯の余地など存在しないことにならないか。完璧な予測が可能なら、人間の意思は否定され、自由に人生を生きることもできない。

革新的な技術であるがゆえに、数々の問題をはらんでいそうなビッグデータ。その正負の両面をわかりやすく解いた本書は、これからの時代を知る上でもお薦めの一冊だ。