[感想]幻想映画館/堀川アサコ

060401

お薦め度:★★★☆☆

不思議な読後感の幻想シリーズ

2012年4月に「幻想電氣館」のタイトルで発売された作品を文庫化したのが本書「幻想映画館」。

作品の中では、ひなびた昔ながらの映画館を終始「電氣館」と表現しているが、さすがにタイトルにも「電氣館」を使ってしまっては、訴求力に欠けると思った……、かどうかは知らないが、いずれにせよ文庫化にあたってタイトルが変更された。


また「幻想郵便局」が、文庫化された途端にヒット作となったのにならったのだろう。1年とちょっとという短い期間で本作も文庫となり、書店では「郵便局」「映画館」と並べて大々的にプッシュされていたりする。

そんなこんなの「幻想映画館」。

前作に登場したシーンや人物(幽霊も)がちょこちょこ登場するが、本作から読み始めても充分楽しめる内容になっている。

けれど、出来としては……、うーん、前作のほうが好きかも。

前作は、読み始めてすぐに物語世界にひきこまれたが、今作では、最初のうちは何だかいろんな出来事がとっちらかっている印象で、なかなかページが進まなかった。

主人公の高校生スミレも、スミレの片思いの相手有働さんも、その他に登場するあんな人やこんな人も、なんだかみんな個性が希薄で、ただ勝手に動き回っているように見えて仕方なかった。

ですます調で語られる文体が、物語に独特の雰囲気を与えているだけで、ただそれだけの作品なのではないかしらん?

などと疑問符が頭の中でぐるぐる回り始めた頃に、ようやく物語が動き出した。残り1/3位のところだった(←ここにたどり着くまでがちょっと長かったよぉ)。

あっちとこっちが繋がって、そっちとこっちも繋がって、いろいろな物事を一気に収束させようとする終盤は、前半部分のまったりとした感じとはうってかわって、猛烈なスピードで進む、進む。

ちょっとスピード配分を間違えてやしませんか? と思わないでもないのだけれども、それが作者の狙いだったのか、はたまた単なる物語の流れからなのか。

なるほど、そちらはそういう風に片づきますか。こっちはそんな風にね。えっ、そこはそうなるのですか。

などと、物語はまとまる。とにかくまとまる。一気に、えいっ!とばかりにまとまる。

多少強引な感じがしなくもないれど、でも、そのまとまり方が案外としっくりと来ているのが、この作品の不思議なところでもある。

文庫解説によると、秋には文庫「幻想日記店」が、その後に単行本の書き下ろしで「幻想探偵社」の刊行が予定されているという。

しばらくの間は、幻想シリーズで楽しむことができそうだ。むふふふふ。