[感想]狂骨の夢/京極夏彦

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狂骨の夢
京極 夏彦 著/講談社文庫
お薦め度:★★★★☆

夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか? 著者会心のシリーズ第三弾。(文庫裏表紙より)


疲れた……、いい意味で。

わかりきったことではあるのですが、とにかく厚い、分厚い。そんな984ページ(←おぉ、1000ページは超えてなかったのか)からなる本作は、事件、悪夢、幻想……現実と幻の境があやしくなった出来事が次から次へと起こります。

どこかで何かが関係しているのだろうとは思うものの、はっきりと手にとるようにわかるものはなく、ただそこにあるのは髑髏のみ。どの事件にも悪夢にも、決まって顔を出す忌まわしい髑髏。

極端に言ってしまえば、髑髏だけが現実でそのほかのことはすべて幻なのではないかと思うような、はっきりとした輪郭のない、それでいてとうてい無視することのできない事件ばかりが続きます。

いったい全体こんなにも広げすぎてしまった大風呂敷を京極夏彦さんはどうやって回収するつもりなのだろうかと、謎解きというよりも、作家の手腕のほうに関心が移ってしまったり、いやいやそれよりこの髑髏だ、とふたたび物語に没頭したり、行きつ戻りつしながらも、これだけの作品を長いとも思わずに一気に読んでしまいました。

読み終えた時にぐったりと疲れている自分がいて、ああ長かったなぁと、初めてそこで思ったくらいです。

京極堂の憑きもの落としは華麗で思い切りがよく、不運な運命にもてあそばれた人々から憑きものが落ちて行く様を見ていると、何かしら読んでいる自分自身すら救われているような気持ちになって、読後には爽快感すら覚えました。

髑髏だの首なし死体だの、一歩間違えればグロテスクなだけで終わってしまいそうな出来事を描き出す一方で、最後には爽快感を用意するとは、何という才能でしょう。しかも、あんなにも大きく広げられたはずの物語が、やや強引な部分はあるものの、それでも全部が全部見事に収斂し、そして読み手を納得させてしまう。

今更こんなことを言うのもおこがましいのですが。

やっぱり京極夏彦さんは、すごいです。