[感想]シンクロニシティ/川瀬七緒

051601

お薦め度:★★★★☆

ぞろぞろ出て来る虫を乗り越えても、読む価値ありの良作ミステリー

法医昆虫学捜査官シリーズ第2作となるシンクロニシティ。1作目を読んでいなくても、何ら問題なく本作を読むことができる、と思う。私自身も1作目は読んでいないので。


で、この作品なのだけれども。

「法医昆虫学捜査官」とあるように、虫さんがやたらめったらと登場する。まずはお約束のウジ虫から始まって、ハエ、クモ、アリ、トンボ、さらには巨大ヤスデまで出て来るという豪華ラインナップ。

虫の話を聞いただけで鳥肌がたってしまうような虫嫌いには、読み進めるのはちょっと辛いのではないかと思う。

けれども、頑張れば何とかいけるかも、という程度の人だったら、本作はお薦めのミステリーだ。なんといっても、地味な刑事と、天真爛漫(というか変人?)な女性昆虫学者との組み合わせが秀逸だし、殺人の動機にも無理がなく、ラストの着地も上手く決まっている。

トランクルームから発見された女性の腐乱死体。犯人はなぜ遺体をこのような場所に放置したのか。岩楯刑事と相棒の月縞、そして昆虫学者の赤堀がちょろっと加わって捜査が始まる。

同時進行的につむがれるもうひとつの物語……、東京から田舎街へと引っ越してきた謎の青年。

事件と青年との関わりを頭のすみっこに残したまま、赤堀先生の活躍に目を奪われる、というかその破天荒な行動に目をまん丸にしているうちに、繋がって行くふたつの物語。

2011年に「よろずのことに気をつけよ」で江戸川乱歩賞を受賞してデビューした作家さんの作品だったので、若さで突っ走る部分があるような作品かなと勝手に想像していたのだが、この部分に関してはいい意味で裏切られた。

文章の落ち着き具合といい、物語の構成といい、丁寧なストーリー展開といい、10年ミステリ作家やってましたといってもすんなり信じてしまいそうなほどなのだ。

んんん、と唸って著者略歴をみたら、1970年生まれとのこと。

なるほど。

って、何がなるほどなのか分からないが、作品全体に流れる落ち着きが、本作をさらに上質なものにしているのは間違いない。

時として落ち着きすぎかな、と思う展開が続いたあとには、天然の赤堀先生がいい具合に物語にアクセントをつけてくれる。このあたりのバランスも絶妙。

うん、でももうちょっと赤堀先生の活躍を見たい気がしないでもない。

そんなこんなで読み終えた本書。

決して明るい事件ではないのだけれども、不思議と読後感も悪くない。

虫が大丈夫な人にはお薦めの1冊。