[感想]残り全部バケーション/伊坂幸太郎

042901

お薦め度:★★★☆☆

5つの連作短編集。

文章のうまさは相変わらずで、読み始めた途端に物語の中にすうっと引き込まれた。今まさに別々の人生を歩もうとする離婚一家だというのに、その現実味のなさがいい意味ですごい。当事者なのにどこか他人事で、他人事のくせに、後悔のようなものが見えない糸のようにして彼らのまわりに絡みついている。

そんな彼らの元に届く1通のメール。

「適番でメールしてみました。友達になろうよ。ドライブとか食事とか」。

それは裏稼業コンビの溝口と岡田が送ったメールだった。

ここから物語はころころ転がって、溝口と岡田をめぐる5つの章が時間軸を前後しながら展開される。いっけん関係がなさそうに見える5つの話が、あっちでカチッ、こっちでパチリ、とつながって、最終章ですべての物語がふわっと立体感を持つ。

この伏線が回収されていく感じが、ゾクゾク、ワクワクして素晴らしいのだと子太郎は言うのだけれども。

残念ながら私はさほど心を動かされなかったのだよなあ。

「過去のことばっかり見てると、意味ないですよ。車だって、ずっとバックミラー見てたら、危ないじゃないですか。事故りますよ。進行方向をしっかり見て、運転しないと。来た道なんて、時々確認するくらいがちょうどいいですよ」