[感想]模倣の殺意/中町信

041601

お薦め度:★★★☆☆

昭和48年に刊行された正統派の本格ミステリ。

当初「新人賞殺人事件」のタイトルで昭和48年に発表された作品が、2004年に創元推理文庫から再び刊行され、それから更に8年以上の月日を経て、昨今、突然注目を浴び始めた作品。

なぜ今になって、あちらこちらのランキングに顏をのぞかせるほどの話題になっているのか、そのことについてはさっぱり理由がわからないのだけれども、それでも何でも、売れているのだったら読んでみようかしら、というわけで手にとってみた。


売れない新人推理作家の坂井正夫が7月7日の午後7時に毒を飲んで死亡した。警察は自殺と断定するのだが、坂井と少なからず交友のあった中田秋子と、坂井の死を記事にするよう依頼されたライターの津久見伸助とが独自に調査を始める。

はたして坂井の死は自殺なのか他殺なの。他殺であるならば、誰が何のために……。

というわけで、ふたりの人物によって、少しずつ真相が明らかになって行く過程が丁寧に描かれている。

決して派手な展開があるわけではないのだが、さりとて退屈をすることもなく、そのあたりは絶妙のバランスでもって物語は進む。

このあたりの地味で手堅い進行が当時のミステリの主流だったのか、はたまたこれこそが中町信さんの持ち味だったのか。いずれにせよ、今読んでもさほど違和感を憶えることがないのは事実だ。

けれども、最近のミステリをあれこれと読んでいる自分からすると、やはりもうちょっと刺激が欲しいと、そう思ってしまう部分もなくはない。

作品が悪いわけではない。むしろ、平均以上の出来だと思う。だけど、突然注目されて、ランキングをするすると駆け上るほどなのかと考えた時に、いや、それはちょっと違うと、そう思ってしまうのだ。

ユーモアミステリなんて邪道だよ。がちがちの正統派本格ミステリこそが王道なのだ、という方にお薦め。