[感想]生存者ゼロ/安生正

040302

お薦め度:★☆☆☆☆

「このミス」大賞受賞のパニックもの

先日読んだ「このミス」優秀賞の「「童石」をめぐる奇妙な物語(感想ここ)」が思いのほかに面白く、これだけの作品を優秀賞に押しやってまで大賞を受賞した作品とは、はてどんなものかしらん?というわけで読みはじめたのが本書「生存者ゼロ」。

新人とは思えないような筆力でもって、物語は最初からぐいぐいと進む。


感染症とおぼしき症状でもって、一夜ににして数千、数万人の人々が死に絶える。確たる原因もわからぬまま、パンデミックを阻止すべく奮闘する自衛官の廻田。廻田に引きずり出される富樫博士。

よくある展開なのかと思いつつも、最初の1/3くらいまでは抜群に面白かった。硬質な文章にもかかわらず、すんなりと物語世界に入り込んだ。こんな劇症型の感染症が実際に発生したなら、どれほど恐ろしいことだろうと、自分にひきつけて考えてみたりもした。

けれど、途中からストーリーが堂々巡りを始める。中だるみというのとはちょっと違う。緊張感は維持されたままなのだが、なんだか物語がさっぱり前に進んでいる感じがしないのだ。

それでも辛抱強くページをめくって行くうちに、大量死の原因がつきとめられ……たあたりから、怒濤の展開……、なのか。そう言ってもいいんだろうか。確かに話がころがり始めるのだが、これがもう、何だかとんでもない方向に転がってしまって、とてもじゃないがついて行けない。

自衛隊の奮闘ぶりは、さながらB級ホラー映画だ。

さらには政府の、そして大河原首相の無能ぶりは苛立ちを通りこして、もはやユーモア小説の域。それでも、3.11を経験した今となっては、こういうこともあるかもしれないと何気に納得させられてしまう恐ろしさ。

少しずつ感じるところはあるのだけれども、あっちこっちに話がとっちらかり、しまいには宗教と狂気までもが入り混じり、結局何がなんだかよくわからないままジ・エンド。

ちょっと詰め込みすぎてるかもしれない。