[感想]イン・ザ・ルーツ/竹内真

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イン・ザ・ルーツ
竹内 真 著/双葉社
お薦め度:★★★★☆

「よーし、今から俺の形見分けをするぞ」と、サニー多田良が孫たちに宣言して取り出したのは、トランペットケースいっぱいの根付。歩、進、望の三兄弟は、それぞれひとつずつお宝を手にする。どれも曰くつきの品で、深い物語が込められているらしい。やがてサニーは、ラスベガスへの博打旅行に勇躍出かけるが、搭乗した飛行機が墜落したという報せが届く。そして、数年後…。祖父の形見に秘められた謎と向き合う三兄弟の十二年間を描いた成長小説。「BOOK」データベースより


最高に爽快な読後感♪

祖父の形見の根付けにまつわる話を軸に、三人の兄弟の姿がそれぞれの視点から描かれていく小説。

それほどスリリングな展開があるわけでもなく、根付けにまつわる話といっても、さほどミステリー色が濃いわけでもなく。

正直、物語の中盤、いや物語の2/3がすぎるくらいまでは退屈で仕方ありませんでした。もう読むのをやめてしまおうかと何度思ったことか。

けれども、最後の最後にはきっと何かがある。このままで終わる小説ではない……という、漠然とした感覚が作品を読んでいる間中、つねに意識の中にまとわりついていて、そうしてどうにかこうにかたどり付いたラストでは。

感動!

そう来ましたか!!

と言う以外の言葉が見つかりません。

決して教訓がましい作品ではなく、むしろ物語を最初から最後までひっぱり続ける亡き祖父三四郎の破天荒とも思える生きかたが印象深い作品なのですが、最後の最後になって「生きる」ということの意味が、すとんの胸の中に下りて来て、とても清々しい気持ちになりました。

大きな活字に厚手の紙――読み手が読書の達成感を手軽に感じられるようにと、近頃ではこういった作りの本が多いそうですが、本作「イン・ザ・ルーツ」は、小さめの活字に上下二段組!

読み切るにはそれなりの覚悟が必要ですが、読み終えた後の満足感は保証します。

そうして、祖父「サニー多々良」のトランペットを聴いてみたかったな、ときっと思うことでしょう。


うまく言えねえが、生きるってのは考えることで、考えるってのは自分なりの物語を作ってくことだって、俺は思ってるんだよ。根付けってのはそういう物語の小さなかたまりだ。俺はそれを、三人の孫どもに託したかったんだ。