[感想]「童石」をめぐる奇妙な物語/深津十一

032201

お薦め度:★★★★☆

石をめぐる不思議なつながり。第11回「このミス大賞」優秀賞受賞作。

「このミス大賞」の大賞作ではなくて、優秀賞受賞作。なので、それなりの作品だとばかり思っていたら、おやまあ、びっくり。その印象的なストーリーにうれしい誤算となった本作「『童石』をめぐる奇妙な物語」。

ちなみに「童石」は「わらしいし」と読む。本を手に取るまで「わらべいし」だとばかり思っていた。という話はさておき。

一風変わった病床の祖母の頼み。それは自分が死んだら、口の中に石を入れて火葬し、その後遺骨から回収したその石をある人物に届けて欲しいというもの。

祖母の願いを聞き届けようと、ひとり頑張る高校生の耕平なのだが、その時の描写の緊迫感といったらもう、読んでいるこちらもドキドキものだった。遺体の口に石を入れるなんて作業からしてすでに常軌を逸しているし、さらに遺骨からその石を回収する作業だって、耕平の家族には絶対に見られてはならない極秘の任務なのだ。

あまりのインパクトの強さに、初っぱなから毒気に当てられたようになってしまった自分など、この先読み続けても大丈夫なものかと、ほんのつかの間、迷ってしまったくらいだ。

けれども耕平が、祖母のその石を石コレクターの老人、林さんに届けるあたりから、物語は軽快さを帯び始める。

「死人石」「魚石」「白夢石」「香玉」などなど、見た目は普通でありながら、特殊な効力を持った石たちがずらりと並ぶ林さん宅の土蔵。

石なんて、道ばたや川縁、あるいは海辺などどこにでもある地味な存在だというのに、林さんの言葉にかかると、これらの石が何やら神秘の塊に見えて来る。

そうして気づく、ただの石ころに、すっかり魅せられている自分に。

林さんと耕平に加え、さらには「童石」の正体を知りたいというナオミ先生が加わって、石をめぐる物語はさらに謎を深めて行く。

祖母の作った「死人石」。ナオミ先生の見たという「童石」。石コレクターの林さん。

石、石、石。

どこを見ても石だらけの物語だというのに、その石の秘密が知りたくて、ページをめくるスピードがさらに加速する。

感動だとか、教訓だとか、そういったものとはあまり縁のないストーリーにもかかわらず、読み終わった後に、ずっしりとした何かが心の中に居座っているのは何故なのだろう。

石の持つ寡黙で、忍耐強いその気配。祖母と林さんとの約束。そうして「童石」という不思議な石の意味。

年月の重みというものを感じさせる名脇役たちが揃ったからこその、この読後感なのかもしれない。

「大賞」ではないので、出版社の力の入れ方も(おそらく)違うだろうし、書店で見かけた時の人々の反応も芳しくないかもしれない。けれど「優秀賞」だからという理由だけで、この作品が埋もれてしまうのは惜しすぎる。

口コミからでも、書店のポップからでもいいから、売れて欲しい作品である。それこそ石のようにどっしりと、長い目でもって、じっくりと、じわじわと。