[感想]アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎/創元推理文庫 お薦め度:★★★☆☆

「一緒に本屋を襲わないか」 引っ越してきた途端、悪魔めいた長身の美青年から強盗計画を持ち掛けられた僕。標的は…たった一冊の広辞苑!? 清冽なミステリ。(C)「MARC」データベース


この作品、読もうかどうしようか迷っているのだけれども……。

そう言われたなら「読んだほうがいいよ」と間違いなく答えるだろう。現在と過去が交差する中で物語は綴られていく。細やかに仕掛けられた伏線、後半部分のあっと驚くどんでん返し、一気に収束していく結末部分。どれひとつをとっても、かなりの出来だ。文章そのものも読みやすい。キャラクターたちの個性も際立っている。

だから、読む人が読めばこれはきっと素晴らしい作品なのだ。

けれど、私の評価はやはり★3つ。

好みのタイプの作品ではないのだ。いや、作品の90パーセントは好みなんだけど、残る10パーセントがダメなのだ。

まず、暴力シーンがダメ。
ほんのわずかしか出てこないし、これと言うほどの表現もなされていない。けれど、何の抵抗もできない弱いものをいたぶるかのような、残虐極まりない暴力が、たとえそれを予感させるだけであっても、生理的に非常に嫌なのだ。全くもって受け付けない。

そうして、もうひとつ。ラストがダメなのだ。
今回の作品は、その悲しい結末とは裏腹に、ラストは決して暗くはない。むしろ爽やかに上手くまとめられている印象さえある。けれど、私はそこから、夢や希望や、前向きに生きる勇気のようなものをどうしても感じとることができない。切なさ、ほろ苦さ、やるせなさばかりが心のうちに残ってしまい、何だか辛くて仕方ないのだ。

他の方の書評を見ると、爽やかさがいいとか、本当はハッピーじゃないけれど、でもハッピーエンドな感じがいいとか、そういった感想ばかりが目につく。そうなのか?本当にそうなのか?私の受け取り方が人とは違うのかな、と思いつつも、それでもやはり、心の底に沈みこんだ澱のようなものを、耳掻きでひと混ぜされたかのような、そんな胸苦しさがいまだに私の内にある。

ものすごくいい作品なのに、相性が悪い……。私だけ置いてけぼりをくらったかのようで、ちょっとだけ寂しい。