[感想]猫弁と指輪物語/大山淳子

031201

お薦め度:★★★★☆

もはやミステリーというよりも、超純情ラブストーリー!?

猫弁シリーズ第3弾となる「猫弁と指輪物語」。

今回のメインは「密室猫妊娠事件」。外にも出さずに大切に飼っていた猫が妊娠をしたので、その犯人に損害賠償を請求したいというのだ。猫弁こと百瀬が犯人さがしに取り組む一方で、婚約者の大福さんへ贈るためのエンゲージシューズ作りの計画が進む。指輪じゃなくて、シューズ、靴なのだ、靴。

百瀬の天才っぷりよりも、変人ぶりが際立つ第3作は、さらにニシキヘビの転売事件が加わって、物語がゴロゴロと回転し始める。


けれど、この作品をミステリーと思うと、謎はとことん弱い。なんたって、全体の1/3も読み進まないうちに「密室猫妊娠事件」の構造が見えてしまったほどなのだ。

いや、もうこれはこういう結論しかないでしょ、と思いながら読んだら、やっぱりそのままだったという、ミステリーとしてはあるまじき展開なのだが、そこはそれ、心ほっこりの猫弁シリーズ。

3作目ともなると、謎よりも、百瀬と婚約者の大福さんとの進みそうでさっぱり進まない、もどかしいことこの上ない関係のことや、その他のいつもの登場人物たちのあたたかさや、百瀬のどこかずれた優しさだとか、そういうことのほうが大事なような気がしてくるのだから不思議だ。

そうして今回も、物語終盤では涙がポロリ。

みんな素敵すぎるのだ。相手を思いやる気持ちが痛いほどに伝わって来て、ああ、私もこんな優しい人になろう、などとできそうにもないことを、本を読んでいる最中には結構まじめに考えたりしている。

嫌なヤツだな、と思った登場人物も、実は気持ちの表現のしかたが下手なだけだったり、自分の気持ちにただただ素直すぎるだけだったりして、結局どこにも悪人なんていなくって。

毎度のことながら出来すぎの感ありの物語なのだけれども、結局私はこういうのが好きなのだ。現実の世界はややこしすぎるから、物語の世界くらい、ありえないくらい優しくて、楽しくて、ほっこりしたいのだ。

作品にシリアスさを求めないすべての人にお薦めの猫弁シリーズ。これからもシリーズがずっとずっと続いていきますように。

「余計なお世話ってわかってますよ。でもね、余計なお世話はたいがい、親がやるものです。百瀬先生には親がいないんですから、わたしが代理でね、余計をするんです」