[感想]幻想郵便局/堀川アサコ

022002

お薦め度:★★★★☆

此岸と彼岸のまじりあう郵便局を中心とした温かくて不思議な物語

履歴書の特技が「探し物」だというその理由で、登天郵便局のアルバイトに採用された主人公の安倍アズサ。

窓口業務を行うものだとばかり思ったアズサは、深く考えることなくアルバイト先に向かった。けれど、そこは此岸(この世)と彼岸(あの世)の混じり合う、不思議な郵便局だった。

アズサの生活にもじわじわと不思議な出来事が起こり始める。

ふわふわとした優しい出来事があるかと思えば、ギョッとするような出会いがあったりと、読んでいるこちらもどこまでが現実で、どこまでがあの世のことなのか、わけのわからないまま、くらくらとしたような不思議な感覚を味わうことになる。

けれど、アズサがそんな生活に苦もなく馴染んで行くのと同じようにして、私もまたその不思議な出来事が、実は何でもない普通の出来事のような錯覚を覚え始める。作品に登場する人物を見やっては、ああこの人は生きているのかな、死んでいるのかな、とごく当たり前のように考えていたりする。

当たり前でないことが当たり前で、当たり前のことが当たり前じゃない世界。

ああ、そうか。幻想小説ってこんな感じだったな、と、近ごろミステリばかりを読んでいる自分は、昔の友人に出会ったかのような、懐かしい気分になったりもした。

けれどこの「幻想郵便局」ただの幻想小説ではない。

ふわふわととらえどころがなく、くらくらとした目眩をいざなう、そんな感覚的作品なのだとばかり思っていたら、思いのほかしっかりとしたストーリーがあったりもして、おっ、そう来たか、といい意味で裏切られる。

怨霊の出て来る作品に「爽快感」なんて言葉は似合わないけれど、それでも読後感は何とも心地良い。後日譚も温かくてステキ。

生きている人、死んでいった人、互いの思いをしたためた書簡は、郵便屋さんが郵便を運ぶようなわけにはいかない。登天さんがのんびりと焚き火して、煙となった通信が、「虫の知らせ」や「明け方の夢」という形で受け手に配達される。