[感想]双頭の悪魔/有栖川有栖

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お薦め度:★★★☆☆

学生アリスシリーズ第3弾。今回の陸の孤島は芸術家の村

有栖川有栖さんの学生有栖シリーズは、今日までに4作が出版されている。そのうち、一番最初に読んだのが4作目の「女王国の城(⇒感想ここ)」そして次に読んだのがシリーズ3作目の本作「双頭の悪魔」というわけで、見事に作品が書かれた順番を逆にたどっていることになる。

なぜにこんなことになってしまったのか。

ちょっとしたタイミングとしか言いようがないのだけれども、変な順番で読んだにもかかわらず、3作目も十分に楽しむことができた。特に「女王国の城」で感じたキャラクターの個性の弱さは本作ではまったく感じることがなく、それどころか他の登場人物たちも皆きっちりと描かれていて、何の違和感も覚えることなく物語世界にとっぷりと浸ることができた。

ただ、登場人物がちょいとばかし多いのだわね。

というのも、今回の舞台は四国の山間部、過疎地の夏森村と、その村と橋一本で繋がっている芸術家だけの村「木更村」の2つが舞台になっている。舞台が2つだから、登場人物も2倍……というわけでもないのだろうけれど、ちょっと油断すると、誰が誰だかわからなくなってしまうのだ。ニワトリ頭のせいかもしれないけれど。

英都大学推理研のメンバーのひとりであるマリアが、謎の芸術家の村「木更村」へ行ったまま帰ってこない。心配いらないとの手紙は来たものの、それでも心配でならない両親が、推理研の他のメンバーにマリアを連れ戻してくれるように依頼をする。

依頼されたメンバーの江神、望月、織田、アリスの4人は、まずは夏森村へ。さらにそこから他者の侵入を拒否している木更村への潜入をこころみる。

見事、村への潜入をはたした江神。対して失敗した残りの3人は、翌日に江神がマリアを連れて芸術家の村から出て来るのを待つことに。その矢先、大雨の影響で村と村の間にかかっていた唯一の橋が落ちてしまう。陸の孤島となった芸術家の村。そして、アリスたちが待つ夏森村。

川をはさんだ向こうとこっちで起こる殺人事件。

クローズドサークルものが好きな人間ならば、絶対にわくわくするような設定。でもって、陸の孤島となった村は、期待にたがわぬ訳ありの人々の集まり。

江神さん頑張って、とエールを送りつつ、自分も探偵になった気分でもって村人ひとりひとりの動機やアリバイを頭に描きつつ作品を読んで行く。

読む、読む、読む。

そうして、たどりついた結末は……、えっと、だからあれがああなって、これがこうなるから、こういうことになるってわけで……と頭の中で江神さんの説明を一生懸命整理することに。

いや、わかる。江神さんの言ってることはわかるのだけれども、あまりにも入り組んでいるものだから、ひょー、そうだったのかぁ!という簡単明瞭なカタルシスを感じることができなくて、理屈で物語を理解した感じになってしまったのだ。

トリックは素晴らしかったんだけどな。

このトリックの種明かしを一瞬で理解するには、探偵役の江神さんと同じくらいの頭の良さが読み手にも求められるのかもしれないなあ、と思ってみたり。

我こそは!と自信のある方はぜひとも挑戦されたし。

読んで損のない作品です。