[感想]ばんば憑き/宮部みゆき

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ばんば憑き
宮部みゆき 著/角川書店
お薦め度:★★★★★

湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、五十年前の忌まわしい出来事だった…。表題作「ばんば憑き」のほか、『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、『あんじゅう』の青野利一郎と悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。(「BOOK」データベースより)


あたたかくて、切なくて、ぞくりと怖い、怪談江戸物短編集

宮部みゆきさんの江戸物ならば絶対に面白いはずだと、読む前から絶対の信頼を置いていた作品集だったのですが、やはり思った通りでした。

実のところ短編集は作品が薄味のような気がしてあまり好きでないのですが、宮部さんの作品に限っては、どれもこれもが長編にも匹敵するかのような読み応えで、「ばんば憑き」1冊を読み終えた後も、その中のひとつひとつの作品が頭の中でしばらくグルグルしていたほどです。

収録されていたのは「坊主の壺」「お文の影」「博打眼」「討債鬼」「ばんば憑き」「野槌の墓」の6編。

すべての作品に宮部さんの暖かな視線を感じました。近頃人気の作家さんの作品の中には、読み終えた後にざらりとした嫌な感触が心の中に残ってしまうことがあるのですが、宮部さんの作品はとことん優しいのです。

中には悪人として描かれている人物もいますが、その悪人にしたって何の理由もなく悪人になったわけではなく、悪人となるからにはそれなりの生い立ちや過去があって、生きるためにはどうしようもなかったと思わせるだけの切なさを背負っています。

6編の中でもっとも好きなのは「博打眼」でしょうか。みんなが力をあわせて妖怪を倒すまでもの過程も楽しく、また狛犬の阿吽(あうん)さんがとっても愛らしい。その光景が脳裏にまざまざと浮かぶかのようでした。

もちろん他の5編にしたって、それぞれ趣は少しづつ違うものの、どれもこれも心に残る作品ばかりです。

短編嫌いの方にも自信をもってお薦めできる傑作短編集です。