[感想]秘剣こいわらい/松宮宏

020703

お薦め度:★★★★☆

荒唐無稽ともいえるストーリーなのに、お馬鹿路線にはならない絶妙なバランス感覚の物語

「チャンバラ現代劇」って、ん、それって何?

と思って書店で手にとったら、大森望さんも絶賛と知りそのままレジへGO!

ちょうど軽めの作品を読みたいと思っていた時だったし、はずれたらはずれたで、文庫だからまっ、いいか、くらいの軽いノリで読み始めたのだけれども、これが想像以上の面白さ。


事故で両親を亡くし、住んでいた家も借金のために取り上げられてしまった女子大生の和迩メグル。生活費を稼ぐためにと選んだアルバイトは何と電器屋会長の用心棒。

普通なら女子大生に用心棒なんて、ちょっと思いつかない組み合わせなのだけれども、実はメグルはいつも手にしている短い木の棒一本でもって、ヤクザもびっくりの見事な戦いを繰り広げる。

ほう、なんとすごい棒を手に入れたものだ。なぁんて感心しながら読んでいたら、やっぱりそれはただの棒ではなくて、わけのわからない話があっちこっちでとっちらかったと思ったら、やがてメグルのおじいちゃんにまで話しがさかのぼる。

ここから物語は俄然おもしろくなって来るのだけど、ネタばれになっちゃうといけないので、あらすじはこの辺まで。

 

棒を振りまわしてヤクザと戦う女子大生なんて、とんでもない設定なのだけれども、メグル自身はいたって普通の女の子。かつての同級生に恋心を抱いたり、幼い弟の面倒を一生懸命にみたり、友達と馬鹿話をしたり。時折、自分を取り巻く運命の複雑さに心が折れそうになったりと、決してなんでもござれのスーパーガールではない。

だからこそ、荒唐無稽とも思えるストーリーがいい具合にひきしまって、ぴしっと1本すじの通った作品に仕上がっている。

気楽に読めて、楽しくて、最後のひねりもきいていて、そして爽やか。

これだけそろえば面白いに決まってる。

続編出てないのかな、もっと読みたいな、と思ったらすでに「くすぶり亦蔵 秘剣こいわらい」という作品が発売になっていた。けれど、この作品の主人公は亦蔵で、メグルは彼のボディガードとして物語後半からの登場になるのだとか。

ううん、メグルの活躍をもっと見たいのだけど……、でも、まっ、続編がないよりはいいか……と自分で自分を納得させてみたりして。

第3部、第4部の構想もすでに作者さんは頭の中に描いているようなので、このシリーズがずっとずっと続いたらいいな、と。

そのためには、この「秘剣こいわらい」がどどっと売れて、そうかそうか売れる作品なのかと出版社さんが思ってくれ、ほいほいほいとシリーズが続々刊行……って流れかなぁと思うので、もしも私のこのつたない感想文を読んで、ちょっと気になるなぁと思った方がいましたら、どうぞどうぞ勇気を振り絞って(?)この「秘剣こいわらい」手にとって、そして読んでみて下さいまし。

軽くて、爽やかで、楽しい作品が好きな方なら、必ずやご満足いただけることかと思います。