[感想]福家警部補の挨拶/大倉崇裕

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お薦め度:★★★☆☆

倒叙形式の正統派ミステリー

2013年2月21日にシリーズ第3弾「福家警部補の報告」が発売になるとかで、図書館に予約したところまではいいのだが、後になってシリーズを1作も読んでいないことに気づいた。ならば第1作目から、ということで手にとったのが本書「福家警部補の挨拶」のKindle版。

福家警部補などといういかめしい名前とは裏腹に、主人公は背が低くて童顔の、とても警部補には見えない女性。セールスレディや事務員、よくて交通課のおまわりさんにしか見てもらえないという、短所といえば短所、長所といえば長所がある。

何が長所かといえば、それはすなわち警部補らしくない外観で相手を油断させられること。相手の懐にするりと入り込んでは、重要な手がかりをいとも簡単に引き出してしまう。

刑事コロンボや古畑任三郎に代表される最初から犯人がわかっている倒叙形式の本作は、奇をてらうことなく、がちがちの正攻法で相手のトリックを崩して行く。本格ミステリが好きなひとならば、たまらない展開なのだろうけれども、そうではない人には意外性やゾクゾク感がやや足りなく感じるかもしれない。

そうして私は後者のタイプだったので、物語に深く入り込むことができないまま、作品の字面だけを追って最後まで読み切ってしまったような印象ばかりが残ってしまった。

安定感のある正統派の展開なので、推理自体にも無理がなく、本格推理として読む分にはかなり良くできた作品であることは間違いない。ただ、東川篤哉さんの同じく倒叙作品「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?(→感想ここ)」ような、ちょっぴりとんでもな展開を好む自分には、作品自体がやや真面目にすぎたのかもしれない。

本格の倒叙ミステリに浸りたい方にはお薦め。