[感想]雪姫―遠野おしらさま迷宮/寮美千子

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雪姫(ゆき)―遠野おしらさま迷宮
寮 美千子 著/兼六館出版
お薦め度:★★★★☆

「オシラサマを相続してほしい」封印された百年の秘密とは? 恐ろしくも懐かしい、美しき怪談。(「BOOK」データベースより)


美しくも悲しい、くらくらするような幻想小説

「怪談」という言葉にひっぱられて読み始めると、やや違うかもしれません。たしかに、表紙絵のおどろおどろしい感じや「雪姫(ゆき)」というタイトルから、何やら怪しげなものを想像してしまいますが、内容はまったく違います。東北の遠野が舞台ということもあって、個人的には「日本昔ばなし」+「幻想小説」といった感じでした。

主人公は、心の病を患っていたという母に捨てられ、施設で育った雪姫。大人になりアパートで一人暮らしをしていた彼女のもとに、法律事務所から書類が届きます。身よりがないままになくなった遠縁の女性が、遠野の古い民家を遺しているとの連絡でした。

自分のルーツにかかわる何かがわかるかもしれないと遠野へ行った彼女の元に、不思議なことが次々と起こります。その不思議なことのあれこれが、遠野の雪景色にあいまって、幻想的で、美しく、そしてどこか懐かしく、読み手の心にすうっと入り込んで来ます。

その入り込み方がこれまた見事で、あまりに違和感なく入り込んで来るものですから、自分自身が雪姫になったかのような気分にすらなってきます。そうして、読んでいるうちに頭の中がくらくらとして、自分の意識がどこかに飛んで行くかのような不思議な幻惑感を味わいながらも、雪姫にまつわる秘密が知りたくて、次から次へと読み進めてしまいます。

元々が幻想的な作品が好きなものですから、この作品の醸し出す不思議な空気にどっぷりと浸りながら、久々に魅惑的な読書時間を過ごすことができました。

ラストのまとめ方にやや違和感を覚えましたが、それを差し引いても十分に素敵な小説でした。