[感想]私を知らないで/白河三兎

011701

お薦め度:★★★★☆

読みやすい。けれど心に残る。

北上次郎さんが推薦していた作品。同じ作者の前作「角のないケシゴムは嘘を消せない」も北上さんはべた褒めをしており、二作続けて推薦されるとは、どんなに素敵な作品を書く作者さんなのだろうと本書を手に。

主人公は転勤族の一人息子である黒田慎平。何度も転校を繰り返しているうちに、波風たてずにひっそりとクラスに溶け込むことを良しとするようになる。そんな慎平が心をひかれるのは決まって一人親の子。自分が持ちあわせていないタフさに憧れるのだ。

転入先のクラスで出会ったのは「キヨコ」というびきりのタフさを持った女の子。貧しい家庭に育ったため、あらぬ噂や偏見が彼女にべっとりとまとわりついていて、クラスでは誰も近寄ることなく空気扱いされている。

けれども誰よりも強くしなやかなキヨコから慎平は目を離すことができない。

慎平がキヨコから目を離すことができないように、私もまたキヨコの謎めいた部分が気になって次々にページをめくってしまう。

ぶれることのないまっすぐな価値観、他者に頼ることのない自立心。

そうやって肩肘はらなければ生きてこれらなかったキヨコの切なさに反して、本書は全体を通して明るい雰囲気にあふれている。

同じく転校生の高野のあまりの脳天気さゆえか、はたまたキヨコのどこか突き抜けた潔さゆえか。

すべてが丸く収まりすぎる感もあるけれど、ハッピーエンド好きな自分にはそれもまた良し。ほんのちょっとだけ残されたビターテイストが、ただの甘々小説になるところを上手い具合に引き締めている。

ラノベテイストの読みやすさと、純文テイストの中身がつまった作品。お薦め♪