[感想]フライ・バイ・ワイヤ/石持浅海

012208

お薦め度:★★★★☆

近未来を描いたSF学園ミステリ

前に読んだ石持浅海さんの作品「煽動者(⇒感想ここ)」があまり好きになれなかったので、本書「フライ・バイ・ワイヤ」もほどほどの期待でもって読み始めたのだが。

いやあ、これは面白かった。

さいたま工科大学附属高校の選抜クラスという超エリート集団のクラスに、転校生として二足歩行ロボットがやって来る。病気で学校へ通うことのできない一ノ瀬梨香がこのロボットを遠隔操作することで、学校に擬似的に登校するという試みなのだ。

官民一体となった初の実験として、ロボットの登校が始まる。心配されたようなロボットと人との摩擦もなく、ロボット越しの梨香はすんなりとクラスに溶け込んだかに見え始めたその時に、クラスメイトのひとりが殺害される。


エリート校のエリートクラスの、その中でもさらにトップクラスの成績をほこる生徒たちを中心に描かれる本作。

ストーリーのそこかしこで、彼らが優秀なことが強調されるものだから、実はその部分がちょっと鼻について仕方がなかった。別に優秀だって、優秀じゃなくたって、物語の本筋には関係ないだろうに、と。もう少しさり気なく描いたっていいだろうにと、ずっとずっと思いながら最後まで読んで……、そうしてやっと作者さんの意図がわかった。わかった今となっては、ふーむ、致し方なしか、と思わないでもない。思わないでもないけれど、その動機はどうなのよ?と突っ込みたくなったのもまた事実。

という話はさておき。

動機と犯人がわかって以降、更に物語は進む。測度を上げて、ぐんぐんぐんぐんと。そしてこの部分が秀逸なのだ。確実に★1つ分は心に余韻を刻んだ。

動機はともかくとして、ミステリとしての読者惹きつけ度といい、青春ものとしての爽やかさといい、1粒で2度美味しい的な読み応え十分な作品だった。物語に重厚さを求めない方にはお薦め。