[感想]ボーナス・トラック/越谷オサム

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お薦め度:★★★★☆

爽やかな人と幽霊との友情&青春物語。第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

Kindleでの読書はとても快適で、できることならすべての本をKindleで読みたいくらいの勢いなのだけれども、悲しいかな、電子書籍のラインナップが貧弱この上ない。

あぁ、本が読みたい。それもKindleで。

そう思いながらAmazon.co.jpをふらふらしていた時に見つけたのが本作。作者の越谷オサムさんに関しては「陽だまりの彼女」の作者、くらいの知識しかなく、普通だったらスルーしてしまったかもしれないところだったのだが。

なにせ貴重なKindle版。

カスタマーレビューを信じて、ポチって、読み始めたら……、ひょ~、これが大当たり。

 

主人公の草野哲也は、仕事帰りにひき逃げ事故を目撃。その事故の被害者が幽霊となった横井亮太。

なりゆきで草野と日常生活をともにするようになった亮太は、幽霊のくせにおどろおどろしいところは皆無。つねに陽気で、時には草野の仕事に対するアドバイスなんかもしたりして、一瞬、水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」が頭の中に浮かんだりもした。「夢をかなえる……」のような弟子と師匠の関係ではないけれど、相容れないはずの幽霊と人が、なんのわだかまりもなく自然につきあう姿が、読んでいてとても素敵なのだ。

そう、まさしく友情。

幽霊と人なのに、そこにあるのは確かな友情。

それでもやっぱり亮太は幽霊で、願っても、頑張っても、どうしようもないことが彼にはいつくもある。亮太の陽気さにひっぱられて呑気にページをめくっていると、時折おとずれる現実の残酷さに心が痛む。

亮太のひき逃げ犯を探すというのが、本書の最初から最後までつらぬかれている一本の芯なのだけれども、主題はおそらくそこにはない。

ここに描かれているのは、青春、それもとっても前向きな青春、そして男同士の友情。

亮太は正真正銘の幽霊だっていうのに、彼を見ていると、あぁ、頑張らなくちゃな、毎日をちゃんと過ごさなくちゃな、今このひとときを大切にしなくちゃな、なんてことを思ってしまう。

爽やかな後半部分のシーンも秀逸。もともとが涙腺の弱い私など、涙なしでは読めなかった、本当に。まさか幽霊にここまで心を持っていかれるとはね。

重厚感あふれる作品もいいけれど、新年の希望にあふれた時期に読むにはまさにうってつけの作品。

いやあ、新年そうそう、素敵な作品と巡りあえました。

と言うわけで、さっそく越谷オサムさんのその他の作品をKindleストアで検索したら……、むむっ、ない、ないよ。越谷さんのKindle作品は本作1作のみだなんて。

……、今年こそ、電子書籍がもっともっと充実しますように。お願い。