[感想]憧れの少年探偵団/秋梨惟喬

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お薦め度:★★★★☆

安心して読める小学生5人組の探偵団

リーダーにして紅一点の鳥居未菜美、まじめな歌川時雄、名探偵となる月岡芳人、体格がよく武闘派の勝川章、そしてパソコンの達人司馬遷太郎。この5人にからなる少年探偵団が、様々な事件を解決する形で物語は進んで行く。

小学生たちが主人公ということで、日常の謎のような何気ない疑問を推理していくのだとばかり思っていたのだが、これがまったくの見当違い。彼女らの扱う事件は案外と本格的で、殺人事件あり、殺人未遂事件あり、誘拐事件あり……と、名探偵コナンも顔負けなのだ。

そう、名探偵コナン。

少年探偵団が登場するため、私の頭にとっさに浮かんだのはアニメの名探偵コナンだった。作者の秋梨惟喬さんは江戸川乱歩の少年探偵団を強く意識しているようで、作中でもたびたび言及がなされるのだが、少年探偵団シリーズを読んだことのない自分にとっては、コナンのほうがはるかに身近だったのだ。

けれど、本作は同じ殺人事件といっても、名探偵コナンのようにドロドロとはしていない。コナンでは犯人が殺人にいたった動機を深くり下げることが多いため、どうしても後味が悪くなりがちなのだけれども、本作では少年探偵団の小学生らしい微笑ましさ、その中で月岡くんが切れ味するどくくり出す推理がメインとなっているため、常にほのぼのとした空気が漂っていて、読んでいてとても心地が良い。

「クリスマスダンス」「桃霞少年探偵団 対 清流戦隊」「ルナティックを捕まえろ」「不愉快な誘拐」「異次元ケーブルカーの秘密」の5編からなる連作短編集の本作はすべてが主人公の一人称で語られる。

語られるのだが、実はその「主人公」作品ごとに違うのである。ある作品では時雄の視点で、ある作品では勝川の視点で、といった具合に、同じ「僕」でも、作品ごとにその語り手がことなる形をとっている。

こういった形にしたことに関しては作者なりのこだわりがあったようで、あとがきで軽く触れているのだけれども、ただ純粋に作品を読むだけの読者の立場からすると、この形式は大いなる混乱の元。読んでいるうちに、あれ、これは今誰が語っているのだっけ?と思うことしばしば。そう思うたびに、意識がほんの少しだけ作品から遠ざかって現実へと引き戻されてしまったのが残念でならない。できることならば、全編を時雄の語りで通してもらいたかったと思うのだけれども、それだと登場人物ひとりひとりの個性が生きてこなかったのかしらん?

とはいえ、全体に暖かい空気が漂っている「憧れの少年探偵団」は、年末のあわただしい中で、つかの間のやすらぎをもたらしてくれたことは間違いない。続編にして長編作品の「天空の少年探偵団」も気になるところ。