[感想]華竜の宮(上)/上田早夕里

12121015

お薦め度:★★★☆☆

第32回日本SF大賞受賞作。大規模な地球規模の天変地異がもたらした人類の変化

Kindle版での読書。

SF作品は得意ではないので、ほとんど手にすることはないのだけれども、第32回日本SF大賞受賞作ということで気に掛かり、Kindleで読めるということで心が揺らぎ、そうして近未来SFということで、それなら何とかなるだろうと読み始めたのが本書。

でも、読み進めて行くうちに、2017年が舞台だったはずなのに、あっという間に25世紀に突入!

えっ、えぇーっ、25世紀ってSF的には「近未来」なの?

と思った時にはもう引き返すこともできず、上手いことこの作品の世界に絡め取られてしまったなぁ、というのが正直なところ。


さて、本作。

大規模な環境変化により、陸地の大半が水没。すべての人々が陸に住むことが不可能になり人工都市に住む陸上民と、遺伝子を作りかえることで水上生活に適した体となった海上民とが暮らす世界が舞台。

現実世界を見回してみても、国が違うだけで日々、多くのもめごとが勃発しているのは周知の通り。遺伝子構造からして違っている陸上民と水上民とが上手く折り合いをつけられるわけもなく。なすがままの生活を良しとする海上民に対し、あくまでも利己主義な陸上民が一方的にひきおこす様々な摩擦。それらを解決するべく立ち回るのが、(上巻を読んだ限りでは)本作の主人公である日本政府外交官の青澄。

政府高官と青澄との駆け引きは、さながら現代の日本政治の舞台裏を見ているかのようで、現実はこんなものなんだろうなぁ、と思わされることがしばしば。時折、小松左京さんの「日本沈没」のイメージすら思い浮かんだりもして、今当たり前のようにして目の前にある日常は、けれども自分が思っているほど当たり前ではないのかもしれないな、と今さらながら考えさせられた。

自分たちが生きるためには、他の生物は犠牲にしてもいいのだという人間の傲慢さ。

地球規模でみれば、人間だって生物の一種に過ぎないということを、人知を越えた天災を前にした時人々は知ることができるのか、できないのか。このあたりが下巻の見どころとなるのかな、と想像しつつ、SFも案外と深いものなのだなと感心している次第なのでありました。

よしっ、下巻行こっ!